自民と公明、「衆院広島3区」で異例の対立のわけ 河井被告の後任候補で苦悩を深める岸田氏

拡大
縮小

候補者調整で後手に回った岸田派は、8日の臨時幹部会で対応を協議したが、主戦論が出る一方で、「今回は公明に譲って石橋氏は比例に回る」「河井案里被告(参院議員)の失職による参院広島選挙区補選での公明の選挙協力の確約」など、「条件闘争に移るべきだ」(派幹部)との意見も出て、こちらも腰が定まらない状態だ。

岸田氏は、9日夜の民放BS番組に出演した際、「これは党と党で話し合う問題だ」と党本部の対応に委ねる姿勢を強調。自公両党の調整作業についても「与党が分裂して戦うことはあり得ない。私は私の立場で努力したい」と踏み込んだ発言は控えた。

斉藤氏を与党候補とする方向で調整へ

そうした中、地元での調整が膠着状態に陥ったのを見透かすように、自民執行部は12月中旬に公明との水面下での調整を本格化。その結果、自民は次期衆院選広島3区では公認候補を立てず、斉藤氏を与党候補とする方向で12月下旬にも公明側との協議を進める構えだ。

自公両党は「与党の議席を確保することが最優先」(山口那津男代表)との立場で一致している。このため「自民候補では公明の協力が得られず、当選もおぼつかない」(自民選対)との判断から公明に譲歩する方向になったとされる。山口選対委員長は16日の岸田文雄前政調会長との会談を踏まえ、「複数の選択肢があるが、円満になるようやっていきたい」と今後の調整に自信をにじませた。

これに対し、岸田氏は17日に「簡単なことではない。ぜひ丁寧にやってもらいたい」と党執行部による一方的な調整作業を牽制した。ただ、一連の調整作業で弱腰にもみえる岸田氏に対し、自民党内では「密かに公明党と通じる菅、二階両氏による岸田つぶしに徹底抗戦する度胸はない」(細田派幹部)との厳しい見方も広がる。

その一方、次期衆院選の候補者調整をめぐる「菅・二階連合の強権的手法」(細田派幹部)には自民党内の反発も強い。多くの派閥は次期衆院選での公認調整での二階氏ら党執行部の対応に不満を隠せず、「岸田氏が簡単に降りると、他の選挙区の公認調整にも影響が出かねない」(竹下派幹部)との不安を隠さない。

次ページ混迷を深めるGoTo政局
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT