自民と公明、「衆院広島3区」で異例の対立のわけ 河井被告の後任候補で苦悩を深める岸田氏

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特に岸田派は広島3区以外でも、静岡5区や山口3区で二階派との公認争いを展開しており、「広島で腰砕けになれば、総崩れになりかねない」(岸田氏周辺)と危機感を強める。

折しも、師走に入ってのGoTo政局は混迷の度を深めている。コロナ感染者の拡大が続き、菅首相は14日、肝いり政策だったGo Toトラベルの全国一斉停止に追い込まれた。同日夜には二階幹事長ら8人と会食し、「言ってることとやってることが正反対」との国民の批判を招いて菅首相が陳謝を余儀なくされた。

「反菅」は岸田氏の追い風になるか

これに先立つ11日のインターネット番組出演の際の「ガースーです」発言も含め、ここにきて「菅首相はやることなすこと悪手の連続」(自民長老)との批判が拡大。自民党内でも「密かに反菅のうごめきが始まっている」(閣僚経験者)とされる。

だからこそ、9月の総裁選で2位につけた岸田氏の存在が注目を集める。9月の総裁選で菅首相に大差で敗れた岸田氏だが、「ここにきての菅首相への逆風は、ポスト菅を狙う岸田氏のチャンス拡大につながる」(自民幹部)との指摘もある。岸田氏周辺でも「党内の菅・二階連合への不満が岸田政権誕生への追い風になる」(若手)との期待が広がる。

岸田氏は10月以降、当選同期で総裁選後も親交が続く安倍前首相との連携強化に向け、側近も含めて安倍氏サイドとの交流を図ってきた。ただ、その安倍氏は桜を見る会をめぐる虚偽答弁疑惑が再燃し、「身動きが取れない状況」(安倍氏周辺)となっている。

岸田氏は17日、菅首相のステーキ会食について、「コロナ対策は大変厳しい状況だ。政治家あるいは政府の関係者は自らの行動をしっかりと考えていかなければいけない」と間接的な表現で批判してみせた。ただ、「広島3区で党執行部にあっさり押し切られるようだと、党内の岸田待望論もしぼみかねない」(閣僚経験者)。「党執行部にどう対峙するかで、岸田氏の真価が問われる」(同)ことになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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