化粧水が美容の「マストアイテム」という大誤解 肌表面が本来持つバリア機能が弱まるリスク

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さて、角質層はもともと、水分や油分を適切に保つ機能を持っていますから、角質層の本来の機能を妨げずにいれば、肌はつねにうるおいを維持できます。化粧水をおすすめしないのは、この角質本来の機能を乱して、肌を弱めてしまうリスクがあるからです。

化粧水で疑似的に水分が補われると、角質層で水分と油分を適切に保持している細胞間脂質であるセラミドの機能が乱れます。水分が十分あると勘違いするために生成が抑制され、自力でうるおいを保てなくなるのです。

結果的に、肌表面の本来のバリア機能が弱まることで、深層の水分や油分が流出し、キメも荒れて艶を失います。毛穴や小じわ、ニキビなど、さまざまな不調が起こりやすくなってしまうのです。

肌の常在菌こそ天然のクリーム

こうして、わたしたちの肌の調子や美しさは、角質層の状態に大きく左右されるわけですが、角質層の表面はもともと、肌がつくる天然のクリームともいえる皮脂で保護されています。

常在菌である表皮ブドウ球菌は、保湿力のあるグリセリンに似た成分をつくることで肌の水分をしっかり守ると同時に、抗菌ペプチドをつくって悪玉菌の増加も防いでいます。このような作用のおかげで、肌は日々のトラブルをまぬがれて、健康を維持できているわけです。

ただ、やはり洗顔すると皮脂は汚れとともに落ちてしまうため、一時的に乾燥しやすい状態になります。そこで補っておくべきは、化粧水ではないことはもうおわかりですよね。皮脂に近い成分を補って、一枚保護膜を作ってあげるほうが自然です。

また、そもそも角質の細胞間隙は、セラミド、コレステロール、脂肪酸という脂溶性物質から構成されています。ですから水溶性のものよりも、脂溶性のもののほうが浸透しやすいのです。化粧水よりも油分が入ったクリームや美容液、オイルのほうが肌に馴染むのはそのためです。

わたしたちはもともと、からだを正常な状態に保つための調整力を持っています。けれども洗えば洗うほど、肌は保湿しようと多くの皮脂を分泌しますし、逆に外から保湿しすぎれば、肌は怠けて皮脂を分泌しなくなるため、つねに外からの保湿が必要になるという悪循環を引き起こします。

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