「アマゾンキラー」を過大評価するメディアの罪 「わかりやすい切り口」には落とし穴がある
このところ注目の新興企業としてEC(電子商取引)システムを提供するカナダの「ショッピファイ」がメディアに取り上げられるケースが増えている。たいていの場合、「アマゾンキラー」「ネット通販の救世主」といったトーンなのだが、こうしたわかりやすい切り口には落とし穴があるので要注意だ。
ショッピファイはネット通販を行う企業に対し、ウェブサイト作成や決済、配送、場合によってはSNSを使った集客支援など、あらゆるサービスを一括して提供する企業である。料金は月額29ドル~と安く、同社と契約すればどんな小さな企業でもすぐにネット通販をスタートできる。非常に合理的でレベルの高いサービスであり、世界中で顧客が増えているのもうなずける。
ネット通販を行う企業の中にはアマゾンに出店しているところも多いので、通販に関するインフラを提供するという領域においてショッピファイはアマゾンの競合と言っていいだろう。
だがアマゾンのビジネスは基本的に小売店であり、自社で商品を仕入れて自社サイト(つまり自らの店舗で)顧客に販売している。ほかの小売店を自らの軒先に貸すというある種の不動産ビジネスのような業態はあくまで副業でしかない。
ショッピファイは急成長しており、アメリカではEC分野の流通総額においてアマゾンに次ぐ2位となっている。だが、ショッピファイを利用しているネット通販事業者はあくまで自社サイトとしてウェブサイトを運営しており、顧客もショッピファイに買い物に来ているわけではない。
脅威を感じたのはアマゾンより楽天
自社ブランドでウェブ展開したいと考える事業者はショッピファイを利用すればよく、逆に百貨店やショッピングモールに出店したほうが早いという考えに近いなら、アマゾンや楽天に出店すればよい。