「アマゾンキラー」を過大評価するメディアの罪

「わかりやすい切り口」には落とし穴がある

楽天はショッピファイと同様、商品販売ではなく出店者からの支払いを主な収益源としている。ショッピファイを脅威と捉えているのはアマゾンよりむしろ楽天のほうだろう(楽天がショッピファイと提携した理由もここにある)。

つまりショッピファイとアマゾンは一部事業で競合しているが、基本的に別々のビジネスということになる。

「巨人に挑む新興企業」は本当か

ところが記事の多くは、ショッピファイをアマゾンキラーと位置付け、さらにはコロナ危機で苦境に陥った事業者がアマゾンや楽天など既存のECプラットフォームではなく、ショッピファイを使うことで成長を実現できるといったニュアンスにまで拡大している。

ショッピファイを使う以上、基本的には自社ブランドでの集客となり、ブランド力がなければショッピファイを使ったところで苦戦する可能性が高い。結局はリスクを取って自社ブランドで勝負するのか、料金は高いが大手のECサイトに出店するのかという選択にすぎない。

これはリアル店舗でもまったく同じであり、コストは安く済むが、リスクを取って自社店舗の運営にするのか、高い出店料を払ってショッピングモールに出店するのかという違いである。

アマゾンのような超巨大企業に新興企業が挑むという図式はわかりやすく、興味を引く話だが、メディアの記事というのは情報の出し手も受け手も無意識的に事実とは異なるストーリーを組み立てている可能性がある。情報を仕事や投資に生かそうと思っているのなら、一歩引いた冷静なスタンスが必要である。

<本誌2020年12月22日号掲載>

加谷珪一/経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。
http://k-kaya.com/
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