何となく不調な人は「伸び」の重要性を知らない 長時間のデスクワークで陥る不調のスパイラル

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縮小

脳の重さは全身の約2%にすぎませんが、全身の約15%の血流が集中し、消費する酸素量は全身の25%にも及びます。それほど、脳はエネルギーを必要としているのです。

そのため、脳への血流が低下すると「集中力が続かない」「記憶力が低下する」「アイデアがひらめかない」など、多くのデメリットが生じます。長期的には、脳血管性認知症を発症するリスクも高まります。

したがって、肉体はもちろん脳の健康を保つためには、まずは気道の経路を確保して、酸素をしっかり取り入れること。そして、血流を促して酸素や栄養を供給することが非常に大切だと言えるでしょう。そのためにできることは、体をしっかり伸ばすこと。

「伸ばさない」と呼吸筋が衰える

体を伸ばさず、前かがみの姿勢が続くと、胸郭や横隔膜の可動域が狭くなることも見過ごせません。胸郭というのは、12対の肋骨や胸椎によって構成されていて、心臓や肺をガードしている骨の籠のようなものです。脇腹を触ると、肋骨が何本か並んでいるのがわかると思います。それが、胸郭の一部です。

実は、胸郭はがっちりと形が固定されているのではなく、呼吸に合わせてふくらんだり、縮んだりしています。というよりも、むしろ「胸郭がふくらむことで、肺に空気が取り込まれている」と言う方が正しいでしょう。

胸郭は骨の籠であるにもかかわらず、どうしてふくらんだり縮んだりできるのでしょうか。その理由は「呼吸筋」にあります。

呼吸筋というのは、呼吸に関わる筋肉の総称で、主に肋骨の隙間を埋めている肋間筋や横隔膜を指します。そして、これらの呼吸筋が伸縮することで、胸郭も連動してふくらんだり縮んだりしているのです。

つまり、肺にたっぷり酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するためには、呼吸筋がしっかり機能する必要があるということです。

『スゴ伸び』(小学館集英社プロダクション)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ところが、現代人の多くは、呼吸筋を充分使えていません。速くて浅い呼吸が習慣化していたり、前かがみの姿勢が続くことで、胸郭を動かせる範囲が狭まったりしているからです。

そうすると、呼吸筋は伸縮する機会を奪われ、どんどん衰えていきます。その結果、さらに速くて浅い呼吸になり、全身の酸素量が不足するという悪循環に陥ってしまいます。

したがって、体の不調を吹き飛ばすためには、実は、ただ単に体を伸ばし、気道や血管をストレートにするだけでは不充分。道を整備するだけではなく、その道に、必要なものをパワフルに流す力も必要なのです。

小林 弘幸 順天堂大学医学部教授、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

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こばやし ひろゆき / Hiroyuki Kobayashi

1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。『医者が考案した「長生きみそ汁」』、『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム刊)などの著書のほか、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)や「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBSテレビ)などメディア出演も多数。

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