鳥貴族、コロナ禍で打ち出す「新業態の正体」 のれん分けの小型店と焼き鳥以外の業態を準備

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大倉社長
「元々鳥貴族にはのれん分けも兼ねたFC制度があるが、多店舗展開を前提としており初期投資も5000万円と高かった。そのため年に1人ぐらいしか独立できていなかった。
また社員にヒアリングしたところ、「お客さんとの距離感を近くに感じる小さな店舗で独立したい」という声が予想以上に大きかった。実際、過去には小型店で独立した社員が何人もいた。それなら自社で小型ののれん分け店を提供しようと思った。
『鳥貴族 〇〇家』は都心からは距離があり小型店であるため、初期投資は1000万円弱程度で済むような設計となっている」

新しく低投資型のFC制度を用意したことで、今後採用面において大きなアピール材料になることが期待できる。加えて、店舗戦略においても鳥貴族を補完する役割になりそうだ。

狙いをつけたのは「住宅立地」

「大倉家」の最寄り駅はJRおおさか東線の「城北公園通駅」。もともとこの付近は鉄道駅が1つもない鉄道空白地帯であったが、2019年3月にようやく同駅が完成した。

だが、JRが開通したとはいえ「活気あふれるエリア」とはお世辞にもいいがたい。今後「〇〇家」の展開はこうした地味な場所になっていくという。

大倉社長
「鳥貴族では出店しないようなベッドタウンの立地を狙っている。そうすれば鳥貴族の店舗網の隙間を埋めていくことにもつながる。
ターゲットとする顧客層は、若者ではなく比較的年齢層が高めの方々。また、鳥貴族では『おひとり様』のお客を取れなかったが、カウンターがメインなので、そういうお客さんの獲得も見込める」

居酒屋チェーンの多くは、繁華街・ビジネス街・学生街を「一流」の立地とする。鳥貴族もこうしたエリアを主軸に展開してきたが、「鳥貴族 〇〇家」では対照的に郊外の住宅街という「ニ流」の立地を目指す。都心部ではすでに居酒屋が飽和状態ともいわれている中、住宅街だと競合するチェーンも少なく出店余力がまだまだある。

「鳥貴族 大倉家」の外観(写真:鳥貴族)

また、顧客と店員との距離が近く普段使いできる地域密着型の店舗は、コロナ禍の中でも売り上げがあまり落ちていない。「鳥貴族 〇〇家」は十数坪という小さな店舗で店員との距離感が近いため、常連客を作るにはうってつけだ。

どういうFCモデルにしていくかはまだ試行錯誤中だそうだが、「ロイヤルティーや食材の卸売りで稼ぐ通常のFCモデルを現段階では検討している」(鳥貴族広報)という。

独立する社員からすれば、郊外立地の小型店ということで初期投資が少額で済むうえ、古巣である会社から質の高い食材を供給してもらえる。鳥貴族からみても、既存の鳥貴族とは被らない商圏へ出店しつつ、卸売りやロイヤルティーなどで安定収入を見込める。

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