鳥貴族、コロナ禍で打ち出す「新業態の正体」 のれん分けの小型店と焼き鳥以外の業態を準備

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大倉忠司(おおくら・ただし)/1960年大阪生まれ。調理師専門学校卒業後、ホテル、飲食店勤務を経て1985年に「鳥貴族」1号店出店。1986年から社長、2009年に社名を鳥貴族に(写真:ヒラオカスタジオ)

メインの鳥貴族は、直営全店の休業に踏み切った4月と5月こそ、既存店売上高は前年同月比で96.1%減、87.9%減と壊滅的な状況が続いたが、営業再開後の6月には26.8%減と大きく戻した。

「ミライザカ」や「和民」などを持つワタミの既存店売上高が、6月時点で前年同月比68.9%減に沈んでいたことを鑑みると、回復スピードは段違いだ。その要因を大倉社長は次のように分析する。

大倉社長
「当社はもともと、主要な客層が20~30代と若く、3人程度の少人数利用が多かった。また、コロナ前から言われていた、専門性というところも大きいだろう。『何でもそろっている』よりは『ここに行けばこれを食べられる』という目的消費の傾向が、コロナを機により強まったように感じる」

鳥貴族は「対・総合居酒屋」をテーマに、若者でも入りやすい店舗づくりと少人数利用を前提とした内装で差別化を図ってきた。居酒屋などの利用は、コロナが重症化しにくいとされる若年層から戻ってきたため、従来からの戦略がコロナ禍では奏功し、他のチェーンよりもマイナスの影響を抑えることができたというわけだ。

新業態は「非アルコール」

だが、比較的堅調といっても大倉社長は手綱を緩める気はない。2021年に焼き鳥とは異なるまったく新しい業態を投入する予定だという。

大倉社長
「コロナ前から頭の中に新業態の構想はあったが、コロナを機に投入に向けて本腰を入れた。2021年5月1日に新業態を始める。この日は鳥貴族の創業記念日ということもあり、『第2の創業』の思いで臨む。
感染症に強く、テイクアウトやデリバリーにも対応でき、『非アルコール』(アルコール類を原則提供しない)で、チキンを使った業態となる。仮にまた鳥貴族の直営全店が休業に陥ったとしても支えられる、『第2の柱』となれるように育成していく。最終的には新業態の海外展開も見据えている」

これまで鳥貴族の単一ブランドで焼き鳥のみの事業展開を貫いてきた。だが、国内はいずれ市場が飽和状態に陥ることを懸念し、コロナ前から新業態を意識していたと語る。

かつては出店を急ぎすぎた結果、商圏分析が甘くなり、同じ商圏で顧客を取り合う「自社競合状態」に陥った。ただ新業態は、同じ鶏を使った料理ではあるものの顧客を取り合わないブランドにするそうだ。大倉社長が心に秘める新業態とは何だろうか。

大倉社長
「外食業界で最近流行っている『から揚げ』だけは絶対にしないと断言できる」

「ヒントだけでも教えてほしい」。そう問うと、大倉社長はニヤリと笑みを浮かべた。

中尾 謙介 東洋経済 記者

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なかお・けんすけ

1998年大阪府生まれ。現在は「会社四季報」編集部に在籍しつつ水産業界を担当。辛い四季報校了を終えた後に食べる「すし」が世界で1番美味しい。好きなネタはウニとカワハギ。

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