東京・谷中のぼろアパートが人気スポットに 壊して建てる時代は終わり! ソフトの力で再生する

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制約条件がむしろオリジナリティを生む

このサイトスペシフィックという考え方は、「HAGISO」で運営されているコンテンツにも生かされた考え方となっています。

「私たちはコンテンツ出発ではなく、コンテナ(建物)ありきです。通常、コンテンツからだと、カフェにする⇒こういうターゲットにする⇒こういうデザインにする、というマーケティングプロセスになります。『HAGISO』はその逆だからこそ、意味があるのです。箱がある⇒この場所を最大限魅力的にするには?⇒光の当て方、ギャラリーを半分使おう⇒場所の使い方を決めた後に、すべてのコンテンツを決める、というプロセスなのです」

今、マーケティングの世界では、ターゲットにリサーチしてプロダクトやサービスを作る、いわゆるマーケットインという考え方が主流です。お客様が必要としているものを作る、というものです。しかし、この考え方でモノやサービスが作られすぎてしまった結果、同質のものが増えてしまっています。

逆に、場所を生かさないといけないという「制約条件」が新しい価値として、お客様の価値になっているというのが、この「HAGISO」です。一般的に言えば、更地から何かを作るほうが魅力的に聞こえるかもしれませんが、「制約条件」はその場所が持っている特有の課題から生まれていることが多く、言い換えればそれは「オリジナリティ」になるとも言えます。

また、その「制約条件」を乗り越えて「オリジナリティ」のあるものにするためにこそ、クリエーティブなアイデアが必要なのです。まさに「必要は発明の母」です。実際に、ここ「HAGISO」では、古いアパートを建て替えているがゆえ、スペースが限られているうえに柱が多くあり、カフェやアート空間などでしっかり区分けをすることが難しくなっていますが、それをうまく利用したイベントを行っています。

たとえば、コンテンポラリーダンスのイベントでは、カフェスペースとアートスペースを融合した会場設営になっていて、一部には食事をするシーンをうまく入れた表現になっていたり、カフェメニューにアーティストの表現を注文できるものが入っているイベント日があったりと、場所の制約をうまく生かしたイベント運営を行っているのです。

コンテンポラリーダンスのイベント。お客様との距離も近い
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