「思い出したくない事」こそ笑いに変えるべき訳 他者を元気にできる「最高のネタ」にもなる

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自分の恥辱もカッコつけて隠したり、無理に蓋をしたりするより、笑い飛ばしてしまったほうがかえって楽だと思うんですよね。私は少なくともそうやって、自分のなかに毒素を溜め込んだり、発酵させたりしないようにしています。

テルマエのヒット後、エッセイをたくさん執筆するようになったり、テレビの仕事が増えたりしてから、全国各地に講演会で呼んでいただくことも増えたのですが、お笑いの聖地、大阪に行くと、会場に集まる方々のリアクションが明らかにほかの地域とは違います。

まずステージの前のほうに座っている方々の多くが、私の言葉にいちいち反応している様子がよくわかる。ふむふむと相づちを打ちながらも、"オチ"を期待して身構えて聞いている姿を見ていると、落語家でもない私もつい「よし、ここで話を一回落としてみるかな」というチャレンジ精神が出てきます。

笑いが満たしてくれるもの

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それがすごく楽しい。私の過去の恥ずかしいこともこれだけウケる話になるのかと思えば、楽しい気持ちになるというものです。恥辱に感謝です。

講演会が終わって会場の裏口から出ようとすると、出待ちをしていたおばちゃんが「良かったよお、あんたっ!」と背中をバーンと叩き、「ま、今日は80点くらいやな! ガハハ」と感想を言っていただけるのもありがたい。もっとみなさんに楽しんでもらうために精進しようと思うわけですよ。

とにかく生きていくうえでの自らの無骨さを受け入れていくほうが、非がないようスマートに、スタイリッシュに、失敗も恥辱も避けてかっこよさばかりを意識した生き方よりも、よほど自分が頼もしくなりますし、等身大以上の理想を自分に課して達成に向けてがんばるより、よほど気楽で毎日が楽しくなると思います。

講演の内容がなんであれ、皆さんに笑ってもらえるのがわかると、とても勇気づけられます。自分の職業ってなんだったっけ、と思うくらいの達成感に満たされます(笑)。

ヤマザキ マリ 漫画家・文筆家・画家

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やまざき まり / Mari Yamazaki

日本女子大学 国際文化学部国際文化学科 特別招聘教授、東京造形大学客員教授。

1984年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。

2010年『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞2010受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受賞。2024年『プリニウス』(とり・みきと共著)で第28回手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞。

著書に『ヴィオラ母さん』『ムスコ物語』『歩きながら考える』『扉の向う側』『貧乏ピッツァ』『最後の講義 完全版 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』など。

2026年1月現在、『続テルマエ・ロマエ』を集英社「少年ジャンプ+」で連載中。

*Photo:ノザワヒロミチ

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