「思い出したくない事」こそ笑いに変えるべき訳 他者を元気にできる「最高のネタ」にもなる

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とくにパンデミックのなかなど、疲れた心に笑いは必要ですよね。先日SNSを見ていたら、YouTubeに投稿されている動画が目に留まりました。とあるニュージーランド人の男性がリコーダーで映画『タイタニック』(ジェームズ・キャメロン監督)のテーマ曲を演奏しているというものです。

実はこの動画、10年ほど前に友人の漫画家・羽海野チカさんに教えてもらったものでした。『テルマエ・ロマエ』の著作権に関する炎上騒ぎのなかで落ち込んでいた私を、「マリちゃん、これを見て元気を出してね」と励ましてくれたのです。

その動画を久しぶりに見たわけですが、死ぬほど笑い転げました。話していても思い出し笑いをしてしまうほど、面白い。随分と長く世に出回ってきたのに、いまだにこれほど笑えるのか、と感心しているほどです。

YouTubeの動画で笑い転げる

すでにご存じの方もたくさんいるかもしれませんが、ざっとこの動画の説明をいたしますと、シャツのボタンが腹部ではちきれそうになっている、ブロンド、ロン毛のふくよか体型の男性が、小学校などで私たちも懸命に練習させられたあのリコーダーを吹きながら、街を見下ろす高台や波止場、キャンドルライトに照らされた食卓など、さまざまな美しいロケーションでドラマティックなポーズを決め続けます。

しかし、肝心のリコーダーが、もしかしたら意図的なのかもしれませんが、破壊的にヘタクソなのです。ドラマティックでエネルギッシュなポージングとは裏腹なヒョロヒョロとした頼りない旋律。

クライマックスにいくほどそのギャップはエスカレートしてすごいことになっていきます。タイタニックのテーマはそもそもドラマチックで切ない感情を誘発するような性質を持った音楽ですが、そんな固定観念を斜めから捉えているシニカルさが私にはツボなのかもしれません。

「リコーダー タイタニック」と検索すればすぐ出てきますので、未見の方はぜひご覧ください。とにかくそこにあるのは、みっともなさのオンパレード。素晴らしいセンスです。

私自身も、自分や家族の恥ずかしいことをギャグ漫画に昇華し、義父母や夫から「なんでこんなこと公表してくれたんだよ。もう日本に行けないじゃないか!」とひんしゅくを買うこともあるわけですが、思い出したくもないみっともないことやつらいことは、実は時間の経過とともに熟成されると、他者を元気にできる最高の笑いのネタになるものなのです。

と同時に、自分を俯瞰できる補強のエネルギーにもなる。あのリコーダーの彼はきっとそこまで考えていないと思いますが(笑)。どんなに恥ずかしい過去だって、顧みたときに"笑い"という表現に変えていけばいい。

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