築地本願寺、「30万円合同墓」に予約殺到の理由 「子どもに迷惑をかけたくない」中高年に大人気
前例のないコンセプトであるため、この合同墓をつくるにあたっては、寺院内で議論がありました。プロジェクトメンバーを中心に、マーケティング調査からデザイン、冥加金(みょうがきん=合同墓の契約金)に至るまで、多くの議論を重ねた結果として、スタートすることができました。
境内に建てられた納骨堂は、本堂やインフォメーションセンターとマッチする現代美術館のような趣ですが、内部には礼拝堂もあります。回廊に刻まれているのは、俗名にあたる「個人名」。合同墓への申し込み後、多くの方が、お参りして自分の名前を回廊で確認されています。
また、合同墓と一緒に、帰敬式(ききょうしき)を申し込まれて、仏様の弟子になった証しである「法名(ほうみょう)」を受けられる人もいます。ほかの宗派での戒名に当たる「法名」はその宗派の信者が授与されるものですから、生前に「法名がほしい」という場合、浄土真宗の門徒になる「帰敬式」を受けてもらい、この機会に築地本願寺の門信徒になっていただくのです。
築地本願寺の合同墓の大きな特徴は、「浄土真宗の教えや儀式を尊重いただければ、これまでの宗派を問わずに誰でも入れる」ということです。故人であっても申し込みは法名や戒名がわからなければ、俗名でもまったく問題はありません。これは「あらゆる人(衆生)を救う」という教義からくる浄土真宗のおおらかさ、非常に大きな特徴だと思います。
キリスト教やイスラム教は「異教徒お断り」が原則で、「自殺者は弔えない、同性愛を許さない」といった一神教特有の厳しさがありますが、それに比べると仏教はかなりゆるやかです。浄土真宗は仏教の中でもとくに間口が広い宗派といえます。
現代人の意思を尊重できる親鸞聖人の教え
親鸞聖人の言葉を集めた『歎異抄』に、有名な一節があります。
「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」
たとえこの世で殺人を犯した者であっても、念仏を信じ称えていれば死後は浄土に導かれ、そこで阿弥陀如来が成仏させてくれるという教えとして理解されています(より正確には、ここで言う「悪人」とは、煩悩が多くて悟りが開けない人、「善人」とは自らの善で悟りを開こうとする人、という意味で、そのため阿弥陀仏の本願にまかせる思いに欠けてしまいます)。
誤解されやすいのですが、「殺人を許す」というニュアンスではありません。「殺人者は罪人である以前に、罪を犯さずにはいられないほどの煩悩を抱えた弱い人間。そんな人こそ救わなければいけない」という、阿弥陀如来の慈悲の深さを説いたものです。
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