築地本願寺、「30万円合同墓」に予約殺到の理由 「子どもに迷惑をかけたくない」中高年に大人気

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どのお寺も永代供養(浄土真宗では先祖に対しては「供養」という言葉は使いませんが、ここでは一般的な用語として、お寺が永久にお墓を守り、お経をあげて個人を追悼することを意味しています)を引き受けていますが、それで人々の先行きの不安がすべて拭い去られるわけではありません。

さらに現代のミドルやシニアに共通するのは、「次の世代に迷惑をかけたくない」という気持ちです。自分できちんとお墓も用意して、準備万端で死を迎えたいと考えているから、余計に悩みが増えるのです。私自身、60代半ばでまさに「終活」を考える年代です。時代に寄り添う「これからのお墓」を提案しなければいけないと、ずっと考え続けていました。

新たなお墓のかたち「築地本願寺合同墓」

家族葬など葬儀が簡素化されても、人の死には儀式が必要で、葬儀への参加の代わりにお墓参りに行く人もいます。そう考えると、お墓は儀式を兼ねるものであり、誰もが立ち寄れるようにするには、便利な場所にあってしかるべきです。

その点、築地本願寺は首都圏の方々にはアクセスが抜群によい場所にあります。地元である築地はもちろん、銀座からすぐ近く、買い物帰りに立ち寄ることもできます。多くの人が求めている、「これからのお墓」が提案できる──そう考えて私たちが立案したのが、「合同墓」でした。いわばお墓のマンションで、誰もが気軽に訪れることができる、シンプルなお墓です。

新たなお墓のかたちとして提案する「合同墓」(写真提供:築地本願寺)

合同墓のプランを立てて実行する段階で、細かなマーケティング調査を一般の調査会社のインターネット・システムを使って行いました。いわゆる世論調査のようなものです。

一般的に寺院はその成り立ちからいって、「自分たちはありがたい教えを与える側」「仏様の教えをお取り次ぎさせていただく立場」という、いわば上から目線の意識が染みついていて、どうしても相手の立場に立って「何が求められているのか?」を慮る(おもんぱかる)ことが苦手です。

しかしそれでは、独りよがりな改革になり、人々の役に立つことも、喜んでもらうこともできません。ビジネスとして考えれば、プロダクトアウトの発想であり、大きな投資をして赤字がさらに膨らむという最悪の結果となるでしょう。

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