名探偵が関係者を「全員集合」させたがるワケ

事件の解決は論理的に魅せることが大切だ

その裏返し版として、「犯人だけが知らなかった事実」を決め手にする方法もある。犯行が行われた時刻、「登場人物なら誰もが知っている」出来事について、1人だけ知らない人物がいたら、それは「犯行のため別の場所にいたから、その事実を知ることができなかった」ということになり、犯人限定の根拠となる。

犯人を指名するための段取りはさまざまだが、手掛かりの論理的積み上げを経て容疑者を絞り、決定打としてこうした限定を繰り出す、という合わせ技で成り立っていることが多い。偏った要素だけだと犯人を絞りきれなかったり、推理に強引さが目立ってしまうから、両者を上手くブレンドして、無理なく論理的に解決までの道筋を示すのだ。

解決はより論理的に魅せたい

そして、どうせなら、その解決は「より論理的」に魅せたい。同じ論理でも、提示の仕方によっては、さらに緻密で精密だと感じさせることができる。

エラリー・クイーンの作品は論理的だとよく言われるが、アガサ・クリスティーの作品で、論理性がもてはやされることは少ない。解決編における推理の過程は、クリスティーの作品だって充分にロジカルだ。論理的に構築されていない、なんてことは決してない。この両者の印象の違いはどこから来るのか。学生時代、ミステリ研の先輩が、わかりやすく説明してくれた。

「クイーンもクリスティーも、解決の論理性に差はない。クイーンが論理的だと言われる理由は、10の可能性の中から、9つを潰したあとに、真相を示すからだ。他のあらゆる可能性を潰して、唯一の真相に到達したように見えるからだ」

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