ワクチン接種後の「睡眠不足」が何ともヤバい訳 免疫を獲得したいなら必ずしっかり寝てほしい

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私は、睡眠不足がこの免疫システムにどのような影響を与えるか、実験で調べました。すると、徹夜をした後、体内の自警団は疲弊していて、異物発見時の食らいつきが弱かったのです。つまり、十分な睡眠が取れなかった後は免疫システムが十分機能せず、感染症にかかりやすくなることがわかりました。

また、点鼻薬によって風邪ウイルスを投与された被験者の睡眠時間と健康状態を調べた研究では、6時間睡眠の被験者は7時間睡眠の被験者よりも、風邪をひくリスクが4倍も高いことが判明しました。

「予防接種の効き目」はその日の睡眠時間で決まる

より特定の侵入者に的を絞って対応する「特異的免疫システム」という、成長とともに進化する免疫系統も人体には備わっています。

これは、侵入者の情報を記録し、体内にある「B細胞」がその異物(抗原)に合致する抗体を作り出す免疫反応です。抗原と抗体がドッキングすることで、体の免疫システムが侵入者を的確に見つけられ、より狙いを定めて敵を倒すことができます。

ところが、睡眠不足はこの免疫システムを弱めることが研究によって確認されています。

B細胞が抗体を産生するうえで、極めて重要な役割を果たすのが、病原体との接触後の「最初の夜」。

ドイツで実施された研究では、医学生を2グループに分け、肝炎のワクチン接種を行いました。その夜、一方のグループにはよく眠ってもらい、他方のグループには徹夜をしてもらうという研究です。

1カ月後に両グループの免疫反応を比較したところ、ワクチンを接種した夜に睡眠を取らなかった被験者は、肝炎に対する抗体と免疫細胞の形成が少なかったことが確認されました。つまり、予防接種の効果はたった一晩の睡眠不足によって低下し、被験者は肝炎ウイルスに対する十分な備えを得ることができなかったのです。

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