ロールス・ロイス「ゴースト」に見た圧倒的実力 2代目はあのファントムを乗り心地で凌駕する

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これで「脱贅沢」と言えるのか……(写真:ロールス・ロイス)

公式には英語の「post opulence」を「脱贅沢」と訳しているが、贅沢ではないのではなく、これ見よがしな贅沢ではないという意味合いのようだ。過剰からの脱却だという説明もあった。

オーナードライバーに人気が出た初代ゴーストは、結果としてそれ以前の主にショーファードリブンとして使われたファントムが表現していたロールス・ロイスに対するアンチテーゼとなった。ゴーストによって加わった新世代の富裕層の多様な価値観に、よりきめ細かく対応すべく生まれたのが新型ゴーストということなのだろう。伝統的で保守的な富裕層がどうだと言わんばかりの贅沢を見せつけがちなのに対し、若い富裕層の中には、贅沢は愛するものの、ひけらかさない人も少なくないということか。

エンジニアとデザイナーに「新型も実際には数千万円の超贅沢なクルマであるにもかかわらず『脱贅沢』を掲げることで、自己満足だ、言葉遊びだと反感を買う恐れについては考えませんでしたか?」と質問したところ、彼らからは「脱贅沢を表現するための作業や努力を理解してもらえると楽観的に考えています」と実にピュアな答えが返ってきた。彼らのビジネスが幅広い層を対象にしたものではないということを忘れていたこちらが恥ずかしい思いをしただけだった。

今だからこそ超高級車の第一人者が攻めに出た

ロールス・ロイスはこれまで通り顧客が望み、支払うべきを支払い、できるまで待つのであれば、ビスポーク(特注)によって目を見張るような贅沢仕様をつくり上げることもできる。彼らは公序良俗に反するものでない限り断らない。だがラグジュアリーカーの第一人者であるロールス・ロイスは、より根本的な部分で新しい価値観を提示した。

多様化する価値観に対し最初に動いたのが、追随する新参のラグジュアリーブランドではなくロールス・ロイスだというのが印象的だ。長い歴史の中で浮き沈みを繰り返したロールス・ロイスだからこそ、あるべき地位に返り咲いている今こそ攻めが必要だと知っているのかもしれない。

塩見 智 ライター、エディター

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しおみ さとし / Satoshi Shiomi

1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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