「アメリカの実質金利」だけでドル円は語れない ドル安円高の進み方を予想するのに必要な思考

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来年もこんな円高は想定されない。写真は2010年(撮影:吉野純二)

需給面からはヒステリックな円高は予見されず

いずれにせよ、諸要因が重なった結果として「為替の変化→国際競争力の変化→輸出の変化→需給の変化」という経路が機能不全になっているのは事実であり、だからこそPPP対比での過剰な円安ドル高が放置されているという現状がある。

最近、金融市場で持てはやされる「実質金利の低下がドル安を招く」という主張は腑に落ちやすく、筆者も大筋では同意するものだ。しかし、日本経済がかつてのような「円安→輸出増」という経路に頼れなくなっていることを思えば、そのドル安相場が、金融危機後に見たようなヒステリックな円高、つまりドル円が80円台~70円台になるような状態を招くとはかぎらないというに点も留意する必要がある。

円高が拠って立つ実需(貿易黒字)が失われている以上、市場に現れる円買いドル売りにも限度はあるという点は押さえておきたい。21年のドル円の上限は100円割れの98~99円程度ではないか。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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