法と経済学 スティーブン・シャベル著 田中亘・飯田高訳 ~望ましい法制度を経済学の手法で分析する

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法と経済学 スティーブン・シャベル著 田中亘・飯田高訳 ~望ましい法制度を経済学の手法で分析する

評者 江口匡太 筑波大学大学院准教授

 「法と経済学」の分野で重要な研究者の一人であるシャベル教授による力作である。法制度を経済学の手法で分析する法と経済学は、人々の意思決定が(利己的、時には利他的であろうと)、自らの効用を最大に行動することを前提として、望ましい社会制度のあり方を考えるもので、50年に近い歴史がある。

50年の歴史がありながら、日本での法と経済学に対する理解は残念ながら進んでいない。この原因は法と経済学の批判派と賛同派の双方に求められるようだ。こうした現状について、訳者の熱意がほとばしる訳者まえがきから少々長いが引用したい。どのような契約もどんな状況でも必ず履行しなければならないものではない前提で、法と経済学に批判的な論者は〈『「契約を破る自由」を認めることが効率的であるという法と経済学の主張は支持できない』というような、きわめてプリミティブなレベルの批判〉をしがちであり、好き嫌いという感情的なレベルで判断する傾向にある。

一方、推進する側についても〈法と経済学の分析手法を積極的に支持・提唱する法学者や経済学者の中には、分析対象とする法制度自体についての基本的な知識を欠いていたり、あるいは、議論の前提条件(仮定)について何ら言及しないまま、あたかもそれが法と経済学の立場をとる以上は当然導かれるものであるかのように一般的な主張を行う者も見られ、それが、この学問分野に対する否定的な見方を助長している〉と述べる。

こうした不幸な現状を乗り越えるには、きちんと法と経済学を学ぶしかなく、その点で本訳書の出版の意義は大きい。

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