『ガラスの巨塔』を書いた作家、今井彰氏(元NHKエグゼクティブ・プロデューサー)に聞く--現場の実情に弱い人は、現場人を過小評価する
私はフレームが読める。テレビには1秒に30フレームの画像があるが、それが実は見える。だから、フレームエラーがあると、それが気になってテレビが見られなくなったりする。
「なんとかバカ」といえるのかもしれないが、集中していると、目が特殊になったりするようだ。
--ストレスはないのですか。
手がけたものが世に出て、それに感銘した、感動したという声が返ってくる。それを聞く喜びは代えがたいものがあって、このある種の快楽でつらかった分が吹き飛ぶ。
一つの仕事に3~4カ月間、集中し、じっと耐え続けて、それが世に出て、たたえられれば、誰だってそう思うだろう。その喜びは耐えている期間が長ければ長いほど、何倍になって跳ね返ってくる。それを実感してきた。
--小説は「組織と人」も大きなテーマのようです。
組織の中で1人のサラリーマンはどうやって生きていくのか。組織を敵に回したり、組織に裏切られたり、利用したりされたり。そうしながら個人は生きていかなければならない。そうした組織と、その中で生きる1人のサラリーマンの話を書きたかった。
現実社会の話をすると、サラリーマンの人生はなぎでも平坦でもなく起伏に富む。左遷や社内リストラもあれば、出世争いに勝ったり負けたり、あるいは仕事に達成感を得たり、絶望したりと。いろんな欲望があって夢があって、それが繰り広げられている世界だ。
たまたまこの小説ではテレビ局を舞台にしたが、これはすべてのサラリーマンに共通する物語ではないか。