『ガラスの巨塔』を書いた作家、今井彰氏(元NHKエグゼクティブ・プロデューサー)に聞く--現場の実情に弱い人は、現場人を過小評価する

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 報道のスピードを競おうと思えば、裏をとるよりまず出してしまえというのもありうるし、スクープ記事にしたいから寝かして時間をかけるところもある。週刊誌にしても、いろんなやり方もあればレベルもある。記者によっても違う。経験不足の記者でも、初めから悪に違いないと決めつけてかかる記者もいれば、懸命に取材して真実にたどりつこうとする若者もいる。

むしろ不思議なのはステレオタイプでみてしまっていることだ。週刊誌といえばどこも同じ、記者といえば誰でも同じと。もちろん週刊誌といえども上から下まであるし、記者といえどもすてきな記者もいればひどい記者もいる。

これはプロデューサーでもディレクターでもいっしょだ。小説に出てくるような不正を働くプロデューサーもいれば、現場で地道に生きているプロデューサーもいる。多様だとみることを忘れてはいけない

--プロジェクトXのテーマソングは、好きだからという理由で中島みゆきを起用したとか。

熱烈なファン。初めから彼女でなければ歌はやめて、楽器演奏にしようと思った。起用を公表したときは四方八方から猛反発された。四面楚歌でもいいと思ったらやり通す。それがプロデューサー冥利というものだ。

(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済)

いまい・あきら
1956年大分県生まれ。80年NHK入局。「タイス少佐の証言 湾岸戦争45日間の記録」で文化庁芸術作品賞受賞をはじめ、「埋もれたエイズ報告」「シリーズ弁護士・中坊公平」などで受賞多数。2000~05年に放映の「プロジェクトX 挑戦者たち」でも菊池寛賞、橋田賞など。09年退局。

『ガラスの巨塔』 幻冬舎 1680円


  
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