エアガンで撃たれても遊び?いじめ裁判の難点 被害者はPTSDになり、今も苦しみ続けている
一審では、加害者たちに一定の責任を認めたことは前述したが、大きな疑問が2つある。
1つが学校側(市)の責任だ。市はこれまで、佐藤さんへの加害行為があったこと自体は認めている。2013年3月、当時の教育長は記者会見で「本件はいじめではなく、犯罪である」と発言した。同学年の生徒十数名から、金銭強要、エアガンで撃つ、殴る、蹴る、刃物をちらつかせる、殺虫剤をかけられるなどのいじめを受けたことで、PTSDに罹患したことも認めている。
ただし裁判では、学校や教師側がいじめを予見できないか、あるいは、しかるべき対策を講じていたにもかかわらず、暴行やいじめなどによる被害が発生してしまった場合は、責任は発生しないとしたうえで、佐藤さんのいじめの件で、教師は生徒たちの動静を観察し、適切な指導をしていたと主張。被害生徒が「仲良しグループ」の一人の場合、集団的、継続的ないじめなどを受けているのか、認知が難しい、と主張した。
学校外のことや夏休み中のことは認識できない
佐賀地裁はどう判断したのか。加害行為を認めた部分については、佐藤さんが受けた被害の多くが「学校外や夏休み中のもの」であって、担任が認識できたとはいえないとした。
佐藤さんは学校内でもいじめはあったと主張している。「周りを取り囲まれ、背後から首を絞められ、殴られたり、蹴られたりしました。カッターの刃を突き付けられ、目の前でのノコギリを振り回され、恐怖で体が硬直し、頭の中が真っ白になりました」と述べた。
ただ加害生徒の一人がカッターナイフを持ち出した行為について、市側は担任がいない場面であったとして責任を認めていない。
ほかにも、教室では「プロレスごっこ」がよく行われていた。
一審では「殴る蹴るといった暴行、首ロック、ヒザカックンなども含まれる」としつつ、被告生徒らのすべてが、何らかの形でこのプロレスごっこに関わっていた」と認めた。が、「一定の苦痛を受けることを承諾していた」などとして「違法と評価することはできない」と結論づけた。
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