「パ・リーグ」が「セ・リーグ」より強くなった理由 球団経営やマネジメントの視点から「差」を分析

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またパ・リーグ6球団は2006年にパシフィックリーグマーケティングという会社を共同で設立。プロ野球動画配信サービスのパ・リーグTVの運営や、6球団の公式サイトの企画・運用・管理、合同イベントなどを、共同で行っている。

パ各球団の公式サイトは同じフォーマットで作られている。スタイルもサイトマップもばらばらのセ球団の公式サイトよりも利用しやすくなっている。6球団が共同で行うビジネスの仕組みを作ったのだ。単独の球団で行うよりもスケールメリットが見込まれる。いまだに各球団が単独でビジネスを展開しているセ・リーグとは対照的だ。

2004年の「球界再編」をきっかけとして、パ・リーグが長年要望してきた「交流戦」が実現し、セ・パ両リーグの球団が公式戦で対戦することとなった。これも、セ・パの格差を縮めるうえで、大きな意味があった。1979年、セ・リーグの観客動員が史上初めて1000万人を突破し、1075万2000人を記録したときに、パ・リーグは半分以下の522万人にとどまった。

それが2019年にはセの1486万7071人に対しパは1166万9891人と、ほぼ肩を並べるところまで来ている。この背景には、長年にわたるパ・リーグ球団の多面的な努力があったのは間違いない。

「2番目」だからこそ

アメリカにエイビス(Avis Rent a Car System)というレンタカー会社がある。アメリカ国内ではハーツ(The Hertz Corporation)に次ぐ第2位の会社だった。1962年にエイビスは「エイビスは業界ナンバー2」という広告を打ち出した。

ナンバー2だからナンバー1にないサービスを提供できる、顧客の不満をくみ取って変革できる。だからエイビスに期待してほしい。経営陣にはこんなネガティブな広告を打つことへの異論があったが、この広告を打ち出して、エイビスは売り上げが急増するなど大躍進した。

広告業界では有名な話だが、パ・リーグも「2番目のリーグ」だったからこそ、変革を躊躇しなかったし、顧客サービスに徹することができたのではないか。その成果がグラウンドにも表れて、「1番目のリーグ」セ・リーグを圧倒することができたのではないか。昭和の時代から、閑古鳥が鳴くスタジアムでパ・リーグの試合を見続けてきた筆者は、選手、指導者だけでなくパ・リーグ各球団の経営努力にも敬意を表したい。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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