「サブスク」を理解しない企業が淘汰される未来 「ディズニー年パス」はサブスクと言えるか

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サブスクリプションサービスは一定期間の無料と有料のハイブリッド、つまり両方でやるのがよいと思っています。ただ明らかに自分たちのサービスやブランドに興味を持っている顧客が多い場合には、有料プランを導入しない手はありません。

ディズニーやUSJはサブスクか

ディズニーランドやUSJのようなテーマパーク、ホテルなども含めたいわゆるエンターテインメント業界で以前からある、年間パスやバケーションクラブといったサービスも、サブスクリプションと混同されがちなビジネスモデルです。

結論から言えば、もともとは違う目的で始まったものでした。年間パスの目的は、企業の利益につながったからです。年に何回来てもらえれば、これだけの利益が出る。だからこの金額にしよう。バケーションクラブも同様です。そのためバケーションクラブでは、顧客が大勢集まる繁忙期には利用できないなどの縛りがある場合が大半です。

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ただこのようなサービスでは、顧客にそれ以上の価値や体験を提供できていません。つまり、サブスクリプションの定義には当てはまらないことになります。

一方で最近は、年間パスから得たデータを収集・分析し、顧客へのサービスの向上に利用する動きも見られます。新型コロナウイルスの影響で閉館していたテーマパークを再開する際に、USJが取った動きが参考になります。

USJは、年間パスを持っている、大阪府に暮らす人を優先して招きました。一方でディズニーランドは、USJのようなアクションを取りませんでした。そもそもディズニーランドがデータを取得しているのか、分析しているのか。このあたりは情報がないためわかりませんが、今後は間違いなくサブスクリプション的なサービスも含め、データを活用したさまざまな価値ある体験を提供してくると見ています。

例えば現在は利用者の申告制で得ることができる誕生日特典。データがあれば申告することなく受けることができますし、何のアトラクションに興味があるかがわかれば優先的に案内することも考えられます。

ほかのコンテンツとの連携も考えられます。すでにあるディズニーのサブスクリプション「Disney+(ディズニープラス)」で得たデータの活用です。その客が大好きなディズニーのキャラクターでお出迎えするといったサービスです。グッズ販売の際には、同じくその客が好むキャラクターやグッズを中心に置くような仕掛けをすることもできます。

このようにサブスクリプションはあのディズニーですら今後、変えうるものなのです。

山本 康正 ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授

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やまもと やすまさ / Yasumasa Yamamoto

東京大学で修士号取得後、NYの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、グーグルに入社。フィンテックやAI(人工知能)などで日本企業のデジタル活用を推進し、テクノロジーの知見を身につける。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム「US-Japan Leadership Program」諮問機関委員。京都大学経営管理大学院客員教授。日本経済新聞電子版でコラムを連載。著書に、『シリコンバレーのVCは何を見ているのか』(東洋経済新報社)、『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』(SBクリエイティブ)、『アフターChatGPT』(PHP研究所)、『テックジャイアントと地政学』(日本経済新聞出版)など。

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