入国者1人ひとりの行動をすべて追跡することはできず、「一部にそういう(公共交通機関を使う)人がいるであろうことは否定できない」(検疫所)のが実情だ。荷物は宅配便などで送ってしまい、実際には電車やバスを使って移動する人がいてもおかしくないだろう。
また、質問票には虚偽申告をした場合は罰せられる可能性(6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)があると記されている一方、入国後に渡される「PCR検査済み」と記した書類には、隔離や公共交通機関の利用不可といった条件を破った際の罰則に関する表記はない。さらにいえば、書類には「陰性」を示すステッカーは貼ってあるものの、氏名は記載しておらず、誰がPCR検査を受けて陰性だったのかわからない。
これでは入国者に対して、「罰則規定がないルールを守れ」「誰に向けて出されたのかわからない書類の内容に従え」と言っているのと同じ状況で、実効性について疑問を感じざるをえない。
ハイヤーを使うと高額に
タクシーを含む公共交通機関を利用できないという「縛り」がある中、自分で運転できない人や家族などの迎えがない人はハイヤーなどの移動手段を使うしかない。厚労省のサイトにもハイヤー会社やハイヤーを調達できる旅行会社へのリンクがある。だが、遠方の場合、ハイヤーを利用すると相当な高額となる。
東南アジア在住の知人は「(静岡県西部の)実家に帰るためにハイヤーの見積もりを取ったら成田から片道11万円と言われた」といい、「帰国者の公共交通利用禁止の対応が徹底していると予想してやむなく高齢の親に迎えに来てもらったが、こんなずさんな状況だったら、バスや新幹線を使って自力で帰っても大丈夫だったのでは」と、日本の「水際対策」の不十分さをいぶかる。
コロナ禍が長期化すれば、現状のような制限下で何度も出入国する人が増えてくるだろう。一度このような状況を経験してしまえば、隠れて公共交通機関で移動しようとする人が出てくる可能性はある。
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