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26年前の未解決殺人「司法解剖」から迫る犯人像 残された人への「メッセージ」を聞くのが法医学

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  • 佐藤 喜宣 杏林大学医学部名誉教授、日本歯科大学、広島大学医学部客員教授
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その後、1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生。それから約2カ月後となる3月20日、地下鉄サリン事件が起きてしまったのです。

地下鉄サリン事件後、井の頭公園バラバラ事件の話をもう一度聞かせてくれと警察庁が飛んで来ましたが、2009年4月23日午前0時に公訴時効となり、未解決事件となってしまいました。

こんな残忍で手際の良い犯人とは、一体誰なのか?今現在、名乗り出て来た人間はひとりもいません。

2010年以降、凶悪重大犯罪未解決事件の時効は撤廃

2010年4月27日に「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」が施行されたことにより、殺人罪などの公訴時効が廃止され、凶悪な重大犯罪未解決事件は時効が撤廃されました。そのため現在は、どれだけ時間が経過しても犯人が生存していれば、処罰できるようになっています。

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ただ、井の頭公園バラバラ事件は同法の施行前だったため未解決事件となり、迷宮入りしてしまいました。

殺人事件、不慮の事故等には被害者と加害者だけではなく、被害者家族、加害者家族もいます。身近な人がもしもお亡くなりになってしまった場合、遺された人たちがその死をどうとらえるのか。死を受け止めた上で日常を生きていくためにはどうしたらいいのか。

ご遺体には、これからを生きていく人たちに伝えたかったメッセージが必ずあるはずで、そのメッセージこそ、私たち法医学者が聞かせてほしいものでもあるのです。

ご遺体から教えてもらった知識を生きている人に活用する。これを「臨床法医学」と呼んでいます。亡くなられた人の尊厳と権利を守り、生きている人たちに対して法医学の知識をフィードバックしていくことは、犯罪抑止にもつながります。

私が子ども虐待や、ドメスティックバイオレンス(DV)の防止にも取り組んでいるのはそのためです。臨床法医学は、大規模災害等の防災対策にも役立てられていて、今後ますます重要になってくると感じています。

人生100年時代と言われる昨今、生きている人に活用してこそ真価を発揮するのが法医学であり、法医学にはその使命があると考えています。

構成:福山純生(雀聖アワー)

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