新型インフルエンザ・ワクチン、大量余剰9900万人分の教訓
新型インフルエンザの輸入ワクチンが大量に余っている。2月の出荷開始以来、接種したのはたった2336人(3月1日時点)。にもかかわらず、政府は海外のワクチンメーカー2社と3月末までに9900万人分を輸入する契約を結んでおり、費用は1126億円に上る。
長妻昭厚生労働相は「(解約について)話を進めている」と言うが簡単ではない。大量キャンセルとなれば海外メーカーとの信頼関係が崩れ、次のパンデミック時に日本は後回しにされる可能性がある。
片や昨年10月に開始した国産ワクチン接種者は2274万人で、こちらも1000万人分超の余剰が生じている。
昨年の流行時は「ワクチンが足りない」と騒動になったのに、なぜ余ったのか。背景には複数の要因が絡み合う。
まず、接種回数の議論がギリギリまでもつれた。10月には2回だったが、12月中旬に1~12歳児以外は1回となり、国産品の供給可能量が5割近く膨らんだ。並行して輸入品の調達にも奔走。全国民分の確保を目指して9900万人分発注した結果、国産・輸入合計で約1億4000万人分を抱えることとなった。
ところが、接種率は伸び悩んだ。政府の新型インフルエンザ対策本部の専門家諮問委員会・尾身茂委員長(自治医科大学教授)はこう分析する。「初期に学校閉鎖を広範囲で実施したため、感染は学童に集中した。欧米と違って地域への感染拡大が抑制でき、高齢者を含む成人への感染が少なかったので、ワクチンの必要性が感じられなかった」。