大家族生活からドヤ街に流れた男の意外な最期 「寿町」の住人・サカエさんは静かに眠れたか
妻と子、家族9人での暮らしから混迷の日々へ
警察の勾留が解けた後、サカエさんはミチコと子供たちを座間に置いて戸塚の畳屋で働き始めた。畳屋の社長が借り上げたアパートにひとり住まいをした。ミチコにキャバレー勤めを辞めさせたから、旧に倍する稼ぎが必要だった。
「セールスマンを雇って仕事を取ってる会社だったから、仕事はいくらでもあった。西友とかイトーヨーカ堂の催事場の仕事もあったんだよ」
スーパーの催事場で畳づくりの実演をしたのかと思ったらそうではなく、セールスマンが催事場で注文を受けつけると、サカエさんたち畳職人が客の家に派遣される仕組みだった。年末には、月80万を超える稼ぎがあったという。
だが、サカエさんのギャンブル狂いは一向に収まらなかった。実入りのよかったこの畳屋も、金銭トラブルが原因で辞めてしまった。次に勤めたのは大崎の帳元の友人に紹介された大船の畳屋だ。そこで6年間働いたというから長い方だが、この大船時代から、サカエさんの人生は混迷の度合いを深めていくことになる。
「徹マンして、具合悪いから休ませてくれって言ったら、綾瀬の寺尾団地の6畳一間だけどうしても行ってくれって言うんだよ。6畳だったら午前中だけで終わると思って車で現場に向かってる途中、急に気が遠くなっちゃって、救急車で厚生病院に運ばれたんだよ」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら