社長が2年半出社しない会社が急成長する理由 「ライフシフト」「両利きの経営」に学ぶ人生戦略

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2050年の日本を見据えてマレーシアへ移住した起業家の勝算は?(写真:MaCC/PIXTA)
コロナ禍において東京都の人口が減少し、リモートワークの推進によって地方移住者が増えはじめるという現象が起きている。「100年時代の人生戦略」を提唱し、35万部のロングセラーとなった『ライフ・シフト』で描かれた展開が現実に始まったのだ。私たちはどんな人生の選択ができるのか。2050年の日本を見据えてマレーシアへと移住し、現地法人を立ち上げた株式会社grooves代表取締役の池見幸浩氏に話を聞いた。

都心にしがみつく人生からのシフト

僕は2012年の『ワーク・シフト』の時から、リンダ・グラットンさんの著書に大きな影響を受けています。2016年に刊行され大ブームとなった『ライフ・シフト』でも深い感銘を受け、世界が変わるんだという意識を強く持ち、そこに書かれていることをそのまま僕の人生で真面目に実践しています。

『超訳ライフ・シフト: 100年時代の人生戦略』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

2013年頃、僕はまだ結婚したばかりの30代の起業家で、東京都渋谷区の高級住宅街に妻と2人で暮らしていました。高い家賃が負担ではありましたが、起業家としての当時の僕にとって、「どこに住んでいるか」は重要なポイントであり、経営者仲間と話す時もそこにこだわっていたんです。

ところが、子どもに恵まれると様子が変わってきました。自宅から一番近い産科は、郊外の病院と比べると2倍近い出産費用がかかることがわかりました。家族のためにワンボックスカーを買うと、その駐車場代金だけで月額8万円かかりました。

なんとか支払っていたのですが、今度は、妻が、周りの人たちに倣って娘を幼稚園受験向けのプレスクールに入れようと言うのです。確かにそうだなと思って話を聞くと、内容は素晴らしいのですが、対価として月額25万円もの支払いが必要ということがわかりました。

このとき、なんとか都心のいけている場所に食らいついてきた僕の人生がパーンと弾けたような気がしました。東京の高級住宅街に住み続ける人生には限界があると。そんなときにグラットンさんの本を読み、人が生き方や働く場所を考えるときにはもっと違う基準と選択肢があると知り、彼女の提言がすんなりと胸に入ってきたのです。

その後、神奈川県の湘南に引っ越し、そこで娘を育てることを決めました。家の間取りも広くなり、朝は娘と海を散歩してから出社できますし、休日には趣味のサーフィンや釣りも楽しめます。娘は真っ黒に日焼けして、見違えるように速く走れるようになり、自転車に乗るのもうまくなりました。

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