「夫婦別姓」を容認する人が少なくない背景 夫婦同姓なら家庭の一体感が本当に増すのか
国連からの再三にわたる勧告が日本で通らないのは、実は1979年に国連で採択された女子差別撤廃条約を、条約自体は批准したものの、条約議定書を日本がいまだに批准していないからだ。議定書を批准すると、条約が保障する権利を侵害されている人が、裁判などの国内の救済手続きを尽くしても救われなかった場合、国連の委員会に直接救済を申し立てることができるようになる。11月19日には、市民団体「女性差別撤廃条約実現アクション」が、永田町で集会を開き、批准を訴えている。
夫婦同姓強制の規定を違憲と戦う裁判は、2010年代に2度起こされている。2011年には、個人の幸福追求権を保障した憲法13条を根拠にしたが、2015年に最高裁で敗訴している。
4人の裁判官が不利益への理解を示す
しかし、規定を合憲とした最高裁では、判決に補足して4人の裁判官が意見を述べ、仕事上の不利益やアイデンティティの喪失に関する理解を示している。
岡部喜代子元裁判官は、通称使用があることは「婚姻によって変動した氏では当該個人の同一性の識別に支障があることを示す証左」と述べた。
また、両親の姓が異なる子どもへ与える影響を、岡部元裁判官は「離婚や再婚の増加、非婚化、晩婚化、高齢化などにより家族形態も多様化している現在において、氏が果たす家族の呼称という意義や機能をそれほどまでに重視することはできない」と述べる。木内道祥裁元判官も、「夫婦が同氏であることが未成熟子の育成にとって支えとなるものではない」と述べている。
寺田逸郎元裁判官は、国民的議論が事の性格にふさわしいと述べ、山浦善樹裁元判官は「国会が正当な理由なく長期にわたって改廃等の立法措置を怠っていた」と指摘する。また山浦元裁判官は、家庭生活における両性の平等を謳った憲法24条に違反することから、「原判決を破棄して損害額の算定のため本件を差し戻すのが相当と考える」とまで述べている。裁判官の中にも、選択的夫婦別姓に理解を示す人たちはいるのだ。
2度目の裁判は2018年に、法の下の平等を保障した憲法14条を根拠にして起こされたが、2019年に広島地裁で敗訴。現在、東京高等裁判所で控訴審が続いている。
職場やSNSなどで旧姓を使う女性はたくさんいる。事実上、夫婦別姓が通用する社会は始まっていると言える。そろそろ、国は本気で実情を認め、多様な生き方を尊重する選択的夫婦別姓導入を本気で検討してもらいたいものである。
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