いつか来た道? ベンチャー支援が乱立 政府、民間各方面から支援が相次ぐ

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盛況だったこれらのイベントと比べ、新経済サミット2014は、今回運営に苦労した。4月9~10日の2日間共通の先行販売チケットは、1月半ばに4割引きの早期割引を延長。その後もチケットがさばけず、販売終了まで販売価格を割り引いた。

第2回の基調講演ではオラクルのラリー・エリソンCEOが出てくるなど、昨年に続きプログラムの顔ぶれは豪華だ。ただサミット終了後、「月1回の理事会は全員が中々そろわない」(新経済連盟理事の1人)との声も聞こえ、来年以降の円滑なイベント実施には、不安が漂う。

同じイベントでも、より小規模で草の根の動きもある。

開催頻度の高いイベントが、トーマツベンチャーサポートと野村証券が共催する「モーニングピッチ」だ。毎週木曜朝7時から行われ、13年1月の開始から5月末時点で計62回、全国8拠点で開催した。ベンチャー企業と大企業の事業提携を生み出すことを目的に、ベンチャーがプレゼンテーションを行っている。

運営の実務を担うトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬事業開発部長は「オフィス家具のプラスがネット印刷のベンチャー、ラクスルと資本・業務提携を行うきっかけは、この場から生まれた。最近の大企業とベンチャーのコラボレーションは、モーニングピッチがきっかけになったものが多い」と自負する。

ネットバブルの雰囲気

さらに、大学発のベンチャー支援の動きも出てきた。

筑波大学は7月18~20日の3日間、同大学が日本のシリコンバレーとなることを目指し、学生を対象としたセミナーを開催する。LINE社長の森川亮氏、前インテル社長の吉田和正氏らが講師として立つ。永田恭介学長は「こうした実践的な取り組みは全国でも珍しい。04年から06年まで筑波大初の年間ベンチャー設立数は1位だったので、その座を取り戻したい」と語る。

熱気を増すベンチャーブームに対し、警戒する見方もある。1998年設立のVC、グローバル・ブレインの百合本安彦社長は「資金調達前の企業価値が高くなりすぎているケースも見られ、01年のネットバブルと似た雰囲気になってきた」と指摘する。

あまり悲観的になってはいけないが、一時的なブームで終わらないようにするためには、冷静さも必要だろう。

「週刊東洋経済」2014年6月7日号<6月2日発売>掲載の「核心リポート01」を転載)

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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