「緊張しやすい人」こそ活躍できる非対面型営業 会ってないのに商品が次々に売れる心理交渉術

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もう1つ、もし相手に断られたとしたら、逆にチャンスだという話を紹介しよう。どんなお願いであっても、断ったほうは、少しくらいは罪悪感を覚えるものである。「なんだか悪いことをしちゃったかな」「もう少し善意を見せてあげてもよかったかな」と。

したがって、いったん断った相手の2回目のお願いや依頼は断りにくくなる、という心理が働くのだ。つまりは、1回断られた後というのは、むしろチャンスになるのである。

1回断られる作戦で効果は2倍以上に

フランスにある南ブルターニュ大学のセバスチャン・メイナーは、1人で歩いている男性60人、女性60人に声をかけ、「ウェスト症候群」という難病にかかっている少女を、カナダのトロントで専門治療するための渡航費用を募金していただけないでしょうか、とお願いしてみた。いきなりお願いした場合には、20%しか募金に応じてもらえなかった。

そこでメイナーは、まず1回断られる作戦をとってみた。1回目は「2カ月間、毎週土曜日にボランティア活動をしていただきたいのです」とお願いしてみたのだ。そんなに大変なお願いには応じてくれる人はいない。当然、お願いされた歩行者は全員断ってきた。

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そして、断れたらすかさず、「それならば渡航費用への募金をお願いできないでしょうか?」と2回目のお願いをしてみたのである。するとどうだろう、今度は43%の人が募金をしてくれたのだ。

いきなり募金のお願いをしても20%しか応じてくれないが、大きなお願いをして断られた後に同じ募金のお願いをすると43%が応じてくれたのである。2倍以上も効果的なやり方だったのだ。

たいていの人は、お願いが断られるとしょんぼりと引き下がるだけだと思うのだが、それはもったいない話である。断れたときこそ、ちょっとだけランクを下げたお願いをするのがいい。すると、そちらのほうは受け入れてもらえる可能性がアップする。メールや電話、資料をうまく使って、試してみてはいかがだろうか。

内藤 誼人 心理学者、立正大学客員教授、アンギルド代表取締役社長

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ないとう よしひと / Yoshihito Naito

慶応義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(総合法令出版)、『いちいち気にしない心が手に入る本』(三笠書房)、『図解 身近にあふれる「心理学」が3時間でわかる本』(明日香出版社)など多数。その数は200冊を超える。

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