コカ・コーラ「檸檬堂」がまだ伸びる驚きの理由 あえて「レモンサワー」に全集中した狙いとは

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ターゲット層も絞った。「広く網をかけるのではなく、自分の飲むものに少しはこだわりたい、30~40代の低アルコール飲料を欲するユーザーを狙った」(関口氏)という。

実際、檸檬堂のCMは、小ぎれいな和風の居酒屋で女性が1人落ち着いてチューハイを飲むというもので、果実感や爽快感を訴求した他社商品とは異なる雰囲気を醸し出している。

檸檬堂のラインナップ。売り上げトップは「定番レモン」だ(写真:日本コカ・コーラ)

「ウイスキーなどのイメージが強いサントリーなどよりも、親近感を抱きやすいコカ・コーラが作っているのなら、と手に取る人が多かったのではないか」。酒類業界に詳しい酒文化研究所の山田聡昭氏は、コカ・コーラが清涼飲料メーカーとして築いてきた絶大的な知名度が成功の要因だと考える。

「各メディアも『あのコカ・コーラが酒類に参入する』と報じていたので、発売前から檸檬堂の認知度は上がっていた」(山田氏)

なお味わいでは、果汁感を訴求するビールメーカーのチューハイと、焼酎など割り剤の酒にこだわるメーカー、どちらにも振り切らない中間に檸檬堂は位置すると分析する。

後発だったからこそチャンスをつかめた

酒類メーカーの視点でいうと、新たな価格帯のチューハイ市場を切り開いたことで檸檬堂は業界の耳目を集めている。缶チューハイは酒類の中でも成長を続ける数少ない市場であるにもかかわらず、薄利多売に陥っている。そのような状況下で檸檬堂は、ほかの缶チューハイ商品より30円ほど高い価格で売られているのだ。

コカ・コーラは価格設定の際、「あまり値段を高くするとプレミアム商品と化して飲む頻度が減ってしまう。普段から買ってもらえる値段を意識した」(関口氏)。酒文化研究所の山田氏は同社の判断について、「少し高いが決して手が出ないわけではない。プライシングのうまさが出た」と評価する。

同社は年末に檸檬堂の大型新製品を発売する予定だ。詳細は明らかになっていないが、和佐CMOは「さらなる売り上げ拡大の起爆剤となるだろう」と自信を示す。今後追われる立場となる檸檬堂がどこまで市場を牽引できるか。新商品の売れ行きが1つのカギとなりそうだ。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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