三菱商事と伊藤忠、コロナで生じた決定的な差 明暗分かれた両社、5年ぶりに業界首位が交代へ

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2020年3月期には純利益5354億円を稼いだ三菱商事だったが、今期はコロナによる業績の下押し影響を約3000億円と見込んでいる。

中でも足を引っ張っているのが自動車関連の事業だ。三菱商事が20%出資する持分法適用会社の三菱自動車は、今2021年3月期の最終利益が3600億円の赤字と、前期に続いて水面下が続く見通しだ(前期実績は257億円の赤字)。三菱自の不調が打撃となり、三菱商事の自動車・モビリティグループは通期で500億円の赤字に転落する計画となっている。

これまで三菱商事の業績を下支えしてきた資源事業にも、コロナ影響が強く及んでいる。原料炭やLNG(液化天然ガス)は市況が低迷。原料炭は今上期純利益353億円(前期実績は896億円)、天然ガス事業も同86億円(前期は429億円)と、大きく目減りしている。垣内社長は原料炭やLNG、自動車について、「市況の回復まで我慢せざるをえない」と説明する。業績回復は早くても2022年3月期を待つことになりそうだ。

資源価格低迷でも多額の減損計上せず

足元ではコロナの影響をまともに受けている三菱商事だが、中期的にはどうか。今後の業績を推察するうえで着目すべき点がある。

同社は資源価格の低迷にもかかわらず、多額の減損を計上する事態には至っていないのだ。2016年3月期には資源バブルの崩壊で1493億円の純損失を計上するなど、初の赤字に沈んだ。それ以来、資源価格が大きく下がっても利益を出し続けられる体質への転換を進めてきた。

2020年4月には原油先物(WTI)が一時マイナス価格に陥るような事態もあった。そのため、例えば石油元売り大手のENEOSホールディングスは上流事業の資産価値見直しを迫られ、2020年3月期に約900億円の減損を出した。

商社業界でも、三井物産は石油・ガス事業の複数のプロジェクトで475億円、丸紅も石油・ガス開発で1313億円の減損を2020年3月期に計上した。一方の三菱商事も北米シェールガス関連で約100億円を減損しているが、金額は大きくない。「うまくいかなかったこともあり、油を掘って売る事業(石油開発事業)はいまではほとんどなくなっている」(三菱商事の増一行CFO)ためだ。

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