三菱商事と伊藤忠、コロナで生じた決定的な差 明暗分かれた両社、5年ぶりに業界首位が交代へ

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 三菱商事が力を入れてきたLNG事業は、販売価格が原油価格に一部連動するため、大きく利幅が縮小した。だが、顧客企業との契約が大幅な原油安になっても損が出にくい仕組みであるため、「びっくりするほど原油価格が安くならないとLNG事業は赤字にはならない」と、増CFOは説明する。

金属事業でも2015年度の資源バブル崩壊時の教訓が生きている。原料炭は2010年代の最もコスト高だったころと比べると、操業コストは約4割も減った。現在も鉱山のトラック自動化といった施策を展開して、一層の効率化を目指す。

低迷していた原料炭市況は、8月ごろから鉄鋼生産が回復基調にあったことから上昇していたが、中国で豪州産原料炭の輸入が滞っていることが伝えられると10月ごろに再び値を下げる事態となった。

背景には中国と豪州間の関係悪化があり、中国が通関規制をかけているとされる。一説には規制の影響で、中国国内産の原料炭価格は輸入炭よりも1トン当たり70ドルも高くなっているとされる。増CFOは「(こうした)経済不合理なことが続くとは思えない」としており、規制が緩和されれば原料炭の価格が回復し、三菱商事の業績を押し上げる要因になりそうだ。

赤字が続く関連会社の整理を急ぐ

足腰の強さがあるとはいえ、今後はさらなるグループ内の改革も求められる。

三菱商事には約1700社の連結事業会社がある。特に今上期ではコロナ禍で複数の連結事業会社が赤字に陥っている。サーモン養殖大手のセルマック社(ノルウェー)が打撃を受けている1社だ。コロナ禍でレストラン向けのサーモン需要が減少している影響を受けており、今上期時点では赤字に陥っている。このように赤字を抱える連結事業会社の規模は、足元で数百億円にのぼる。

三菱商事はコロナ前から赤字が続いてきた関連会社などについて合併や売却を含めた整理をできるだけ早く進める考えだ。増CFOは「インパクトの大きいもの(事業)からすでに始めている」と説明。垣内社長も「赤字になっている会社に対してはしっかりとした見直しをして赤字をなくす施策をとる」と強調する。膿を出す施策を果敢に進めることで再び成長軌道に乗せることができるか、真価が問われる。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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