NTTが「GAFA対抗」なりえる為に欠かせない条件 ドコモ完全子会社化の先に見える展望と課題

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しかし主従で言うなら、ドコモの立て直しは従のほう。より重要なのは、ドコモ立て直しをテコにしたNTTグループ全体の強化、世界で戦える競争力の獲得、と見たほうがいいでしょう。他誌からの引用になりますが、NTTの澤田純社長は『日経ビジネス』2020年10月23日号のインタビューで次のように述べています。

「(中略)こう決断せざるを得ない環境になっていたのです。米ソ冷戦終結以降のグローバリズム経済が、ここ数年でローカリズムや自国ファースト、あるいは経済安全保障という考え方に変わってきたことが背景にあります。

日本はグローバル化で工場が海外に移転し、国内に雇用や技術が残りにくくなっています。これでは次の技術を仕込むのが後手に回ってしまう。今や通信やIT(情報技術)の分野では、ハードもソフトもその多くを米国や中国に依存しています。

少子高齢化が進む日本は、技術をベースとした貿易立国として生きていくしかありません。ところが、もはやアプリの領域でGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に勝つのは難しいでしょう。さらに彼らは事業をクラウドサービスに広げ、通信インフラの分野にも出てきています。この領域では絶対に対抗しなければいけない。

将来を考えると、移動通信と固定通信を融合したシステムにしていく必要があります。ところが現状は、持ち株会社の研究所とドコモの研究所が個別に技術を開発している。これを一緒にしようにも、両社の少数株主の問題があるのでドコモが上場したままでは難しい。そこで今年4月にドコモと話を始め、今日に至ったわけです。夏から議論に入った官庁にも理解を示してもらえたのは、彼らも環境の変化を感じていたということでしょうね」(『日経ビジネス』2020年10月23日号)

業界大再編、DXの加速、対GAFA

ここに、私の見解を付け加えましょう。ドコモ完全子会社化は、次の3つの狙いに結実するものと私は考えています。

(1)求心力強化で業界大再編に備える

前述のとおり、ドコモ完全子会社化には「携帯料金値下げへの対応」という側面があります。また今後もNTTデータを含めたさらなるグループ再編もささやかれていることからも、「守り」のニュアンスが感じられます。

しかしこうしたNTTグループ再編の動きが、NTTの範疇にとどまるものとは考えにくい。私の予想は次のようなものです。今後は通信・テクノロジーのみならず、モビリティ、エネルギーなどを含んださまざまなプレーヤーを巻き込みながらの「業界大再編」が進んでいく。その中でNTTの求心力を高め、業界大再編をリードする存在になろうとしている。ドコモ完全子会社化は、その一里塚にすぎません。

(2)デジタル庁新設にともない本格化するDXへの対応

周知のとおり、菅新政権が打ち出す政策=スガノミクスの目玉の1つにデジタル庁の新設があります。米中と比べれば「周回遅れ」が明白だった日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)がようやく本格化するものと期待されています。そのなかで、米中に次ぐ第三極を目指す日本のDXの流れをリードする存在になる。そのためにグループ全体の強化を図ろうとしています。

(3)GAFAへの対抗

「GAFAへの対抗」という言葉は、2020年3月にトヨタ自動車との資本提携を発表した際にNTTの澤田社長自身が口にしたものです。この資本提携はトヨタ自動車とスマートシティを一緒に構築することが目的であり、さらにいえばGAFAに先んじて「スマートシティのプラットフォームの覇権を握る」狙いがあるのは明らか。ドコモ完全子会社化もそこに大きく寄与するものと期待されます。現状、対GAFAの戦いはスマホアプリが主戦場ですが、スマートシティのプラットフォームの覇権争いという新しいゲームが始まろうとしています。

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