NTTが「GAFA対抗」なりえる為に欠かせない条件 ドコモ完全子会社化の先に見える展望と課題

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こうしたNTTの積極姿勢は、ドコモ完全子会社化に始まったことではありません。

正確には、澤田純社長が就任した2018年から、それは始まっていたと考えられます。端的に言えば、澤田社長は変革の人です。社長に就任した直後から不動産事業、海外事業と立て続けにグループ再編に着手したことで周囲を驚かせましたが、その印象は現在も変わりません。直近1年間を見るだけでも、NTTが掲げるビジョン「Your Value Partner 2025」の実現に向け、NTTの自己変革を牽引しています。

例えば、2019年12月には三菱商事と「産業DXプラットフォーム」における業務提携を発表しました。

「三菱商事においては産業横断的なICT企業と、NTTにおいてはB2B2Xビジネスにおける広範囲な総合商社との業務提携は、お互いがそれぞれ初の取り組みとなります。

三菱商事が長年かけて構築してきた食品流通分野では、小売・メーカー・卸間で分断されている情報や業務プロセスの統合を図ることで、食品バリューチェーン全体の無駄・重複を排除し、効率的かつ最適化された流通のDX化を推進しています」(『アニュアルレポート 2020』NTT)

また2020年6月にはNECとの資本提携を発表しています。これによりNTTはNEC株の5%弱を保有する第3位株主となりました。ちなみにNECの新野隆社長とNTTの澤田社長は同じ京都大学アメフト部の出身という共通点があり、今回の出資もNTTから持ちかけたもの。アニュアルレポートでは2つの狙いが説明されています。ここに登場するIOWN(アイオン)、O-RANという聞き慣れない技術こそ、NTTが新たなデジタルプラットフォーマーとなるための中核的な技術。のちほど詳述します。

「1つ目はIOWN構想の実現です。NECとの共同開発により、デジタル信号処理に特化したマイクロプロセッサであるDSP(デジタルシグナルプロセッサ、小型光集積回路)を高性能化・低電力化し、それを組み込んだ情報通信機器の開発・販売をまずは実現します。中長期的には、光/無線デバイス、光伝送システムの大容量化にも連携して取り組んでいきたいと考えています」(同)

2つ目の狙いは、「O-RAN」という新しいオープンアーキテクチャーを共同開発するためです。これは、世界の基地局市場を囲い込み、寡占状態としているファーウェイをはじめとする大手ベンダーに対抗するためでもあります。

「国際競争力のある製品をNECと開発し、グローバルに展開することで、通信事業者が5G等のネットワークを柔軟に構築できる環境を整えたいと考えています」(同)

トヨタとの資本提携も

なかでも大きな話題となったのが、2020年3月に発表されたトヨタ自動車との資本提携です。トヨタといえば、すでに同社の東富士工場(静岡県裾野市)跡地を利用した「Woven City(ウーブンシティ)」構想が発表されていました。これは、約71万平方メートルの敷地内に自動運転やロボット、スマートホームなどの技術を試験的に導入し、実証実験を行うプロジェクトです。

今回の資本提携は、ウーブンシティに東京都港区品川エリア(品川駅前のNTT街区の一部)を加えて、スマートシティのコアとなるプラットフォームをトヨタとNTTが共同で構築・運営することが狙いです。

スマートシティとは、自動車、携帯、住宅などあらゆるものが「つながる」ことで創出される未来都市のこと。ウーブンシティ構想では、トヨタの自動運転車「eパレット」が行き来するビジョンが示されています。業界の垣根を越え、日本が誇る通信の雄とモビリティーの雄が手を組むのですから、大きなインパクトがあります。

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