こうしていくつの駅を過ぎたのか忘れた頃に池上駅に着く。真新しい橋上駅舎の改札口で出迎えてくれたのは、東急池上線を所管する2人の駅長。五反田―雪が谷大塚間を預かる五反田駅の所健一駅長と、御嶽山―蒲田間を受け持つ蒲田駅の曽我佳衣駅長だ。
「池上駅は7月にリニューアルしまして、これで構内踏切がすべてなくなりました。以前の駅も古きよき駅舎という感じで素敵だったのですが、新しい駅舎も本門寺をイメージして便利な駅になったと思っています。来年春には商業施設もあわせてグランドオープンの予定です。あと、バックヤードにも女性用の仮眠室やシャワールームもできて、快適なんですよ」(曽我駅長)
まだ新築の香りが残る駅舎を出ると、西島三重子の名曲のような“角のフルーツショップ”はないけれど人の流れの絶えない商店街が線路に沿って伸びていて、少し先には池上本門寺。駅のすぐ先には踏切もあって、人と自転車とクルマがごちゃごちゃと通る。危ないといえば危ないのかもしれないが、やはりこれぞ私鉄沿線の真骨頂だ。
地域に密着した路線
「池上線は優しいお客さまが多いんですよね。電車が混んでいたら黙って1本ずらしてくれたり、改札を通るときに『ありがとう』と言っていただいたり。地域に密着した路線なんだなあと感じますね」(所駅長)
「ほんとうにお客さまとの距離が近い路線ですね。下町情緒あふれるといいますか。駅長には各駅を巡回する仕事があるんですが、その途中でお客さまにも『女性の駅長さんなの? 頑張ってね』などと声をかけていただいて、雑談を交わすこともよくあります」(曽我駅長)
所駅長は東横線で車掌を、田園都市線で運転士を務めた経験もあるというが、そんな所駅長をして「他の路線とは雰囲気が違う」と言わしめる。曽我駅長も「お客さまから『いつもありがとう』とお菓子などを差し入れていただくことが多いのも池上線らしい」と笑顔を見せる。とにかく、外からのイメージと同じく駅長さんたちをもってしても池上線=下町情緒、ということなのだ。
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