「利便性も高いんですよ。池上線だけでも五反田と蒲田。旗の台で乗り換えれば大井町にも出られますし、都営浅草線や東急多摩川線も徒歩圏内ですから」(曽我駅長)
確かに、庶民的な商店街といくつもの路線を利用できる利便性を兼ね備えている地域はほかにないだろう。朝の通勤時間帯、もしもどれかがストップしても、他のルートを使えば遅刻せずに会社や学校に行くことができそうだ。
一方で、池上線は著名な観光地が少ないという“弱点”も抱えている。むろん、池上本門寺や洗足池、戸越銀座のような著名なスポットもあるにはあるが、それだけで多くの人に池上線に乗ってもらえるかというと微妙なところ。そこで、東急電鉄では池上線ならではの昔懐かしい雰囲気をアピールしてきたという。まさに池上線の“私鉄沿線”の風景そのものが観光地、なのだ。
沿線の見どころは多い
「もちろんいろいろおもしろいところはあるんです。旗の台には銭湯を改修して釣り堀になっているところがあって、そこにも一度行ってみたい。あとは石川台の近くの八幡神社には大鵬の出世岩があるんです。大鵬の手形があるので私も手を当ててみたんですけど、やっぱり大きいですよね(笑)」(所駅長)
「久が原駅の近くには昭和のくらし博物館というのがありまして。昭和20年代の庶民住宅をそのまま博物館にしていて、そういうところがあるのもいかにも池上線沿線らしいですよね。あとは、観光スポットというほどではないですけど御嶽山の駅。ホームのちょうど真下を新幹線が通っていまして、お子さまを連れて見に来られる方もよく見かけます。新幹線の上にある駅って、全国でも御嶽山駅だけじゃないですかね」(曽我駅長)
“昭和のくらし”でいうならば、蓮沼駅には今も駅の伝言板が残っている。蒲田駅方面のホームから小さな改札を抜けてすぐ脇に、ひっそりと昔ながらの伝言板。イベント的に後付けしたものではなく、昔から残っているままのものだという。新宿駅なら「XYZ」と書き残したいところだが池上線にはそぐわない。別れた恋人のことでも書いて帰るのがよく似合っている。
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