悪戦苦闘する現場に明日はあるか 【特集/百貨店・スーパー大閉鎖時代】
「あの店は閉められないと思っていた。これで店舗閉鎖に対するタブーがなくなった」。大手百貨店の幹部はそう語る。
“あの店”とは、西武有楽町店。同店は今年12月、26年の歴史に幕を下ろす。
「閉められない」と見られていた理由は大きく二つある。一つは立地だ。同店は商業の中心地・銀座に程近い。「銀座に店を持てば、アパレルに対する発言力が増す。西武は池袋、渋谷、そして有楽町の3店を持っていたからこそ、有利な条件を引き出せていた」(業界関係者)。
もう一つは、大家が朝日新聞社であることだ。百貨店は新聞社の所有ビルにテナントとして入居することが意外に多い。地域インフラとしての側面を持つ百貨店にとって、新聞社との連携にはメリットがある。これまでそうした店を閉めることは、業界的にタブー視されていた。
それでも冷静に見れば、閉鎖は当然の選択だ。同店は開業以来、一度も黒字になったことがない。2009年の売上高141億円に対し、家賃は年間数十億円に達していた。前出の百貨店幹部は「これが一つの契機となり、店舗閉鎖がさらに加速するだろう」と予測する。
百貨店の売り上げ減は止まっていない。今年に入って減少幅は縮小しているが、昨年後半から外需に支えられ回復が顕著な製造業とは対照的な動きだ。人口減、先行き不安……。こうしたマクロ的な要因が解決しない限り、消費はなかなか盛り上がってこない。
百貨店として残るのは全国で70店だけ?
だが、百貨店の低迷はそれだけでは説明がつかない。1991年9・7兆円あった業界の売上高は、09年6・5兆円まで実に3割も縮小した。その最大の理由は、主力商品である衣料品の落ち込みが止まらないことだ。また、取引先依存の体質など、変化に対応できない内部的要因も大きい。業界には「売上高は5兆円まで縮小する」という見方もある。