悪戦苦闘する現場に明日はあるか 【特集/百貨店・スーパー大閉鎖時代】

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 百貨店は個店によってバラツキが多いので、地域的な補完関係は築きにくい。逆に競合店が多い場合、同一商圏内の店を一体的に運営できれば、さまざまなコストメリットを享受できる。「その点で最善の組み合わせは、三越伊勢丹とJ・フロント。名古屋、福岡、札幌など競合地域が多い」(同)。はたして百貨店の再々編はどう動くか。

GMSの再建は百貨店以上に難しい

長期的な低迷に苦しむのは総合スーパー(GMS)も同じだ。店舗過剰(オーバーストア)により1平方メートル当たり売上高は20年でほぼ半減、収益柱だった衣料品の低迷に直面する構造も百貨店に似ている。

だが「GMSは百貨店以上に深刻」(小売業に詳しい松岡真宏フロンティア・マネジメント代表取締役)。市場が縮小しても高額所得者やシニア層に特化した生き残り策が描ける百貨店と異なり、GMSは実用品を多くそろえ、顧客層を絞り込みにくい。さらに大手百貨店は多くの含み資産を抱えるのに対し、GMSは財務的にそうしたバッファが少なく、店舗を閉鎖したくても抜本策が打ち出しにくいという側面もある。

むろんGMS各社も手をこまぬいているわけではない。イオンは各商品カテゴリーを専門店的に切り出すことでGMSの再構築を試みているし、イトーヨーカ堂は個店対応を強化させる。

「最近、M&Aの案件が増えている」。大手GMS中堅幹部はそう打ち明ける。食品スーパーを含めたGMS業界は低収益にあえぐ企業が多いだけに、今後業界再編が起こってもおかしくない。

しかしこれまで同業を次々とのみ込んできたイオンは、規模を利益に転化できず苦しんでいる。身売りはあっても国内に受け皿が見当たらないのが、今のGMS業界だ。

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