伊藤忠が経営理念を「三方よし」に変えた意味 ステークホルダーへの責任をどう考えるべきか

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「企業が何のために存在するのか」を公に宣言する経営理念は、どうあるべきなのか(写真:buritora/PIXTA)
「経営理念こそ最も重要な経営課題であり、会社の舵取りをするうえでの最強のツールである」──ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人などで社長職を歴任し、いまもさまざまな企業のアドバイザーを務める新将命氏は、著書『経営理念の教科書 勝ち残る会社創りのための最強のツール』でそう断言している。「企業が何のために存在するのか」を公に宣言する経営理念は、どうあるべきなのか。

「豊かさを担う責任」から「三方よし」へ

大手総合商社の伊藤忠商事は、2020年4月1日より経営理念を「豊かさを担う責任」(1992年に制定)から「三方よし」に改めた。近江商人であった創業者、伊藤忠兵衛氏の原点に戻る理念の改訂である。

三方よしとは300年以上にわたり近江商人に連綿と受け継がれている商売の哲学で、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三者がよしとなる商いをするべきという教えであり戒めでもある。

「いまだけ、金だけ、自分だけ」の真逆の思想といえる。

今日風にいえば、企業の社会的責任“Corporate Social Responsibility”(CSR)が三方よしであるという意見もある。

しかし私はその意見には同意しない。

CSRは、企業にビジネス以外でも社会に対して貢献することを求めている。企業には社会的な責任がある。それは確かだが、ではそれで十分か。

企業には、社会への責任と同時に果たすべき責任がほかにもあるはずだ。

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