つなぎ法案劇の謎
1月28日から3日間、つなぎ法案なるものが急浮上してあっという間に消えるというどたばた劇が国会で演じられた。争点のガソリンなどの揮発油税の暫定税率をめぐる騒ぎである。与党は期限切れの3月末に訪れる攻防戦を素っ飛ばすために奇策を持ち出したが、衆参両院議長の斡旋を受け入れて取り下げたのだ。つなぎ法案作戦の主導者は誰だったのか、福田首相の真意はどこにあるのか、民主党の徹底抗戦姿勢はポーズだったのか、すぐに兵を退いた小沢代表は福田首相と通じていたのではないか等々、真相はいまも謎に包まれている。
騒動劇をめぐる与野党の星勘定は、「痛み分け」という見方が一般的だが、喧嘩を仕掛けた自民党は「年度内に結論」という民主党の譲歩を引き出し、点数を稼いだと見る人もいる。一方、予定よりも2ヵ月早い決戦突入なら、作戦が狂って総崩れの恐れがあった民主党は、戦争を先送りできて、最小限の失点にとどめたと見ることもできる。
だが、もともとつなぎ法案には素っ気なかった福田首相も、一度は徹底抗戦を叫んだ小沢代表も、永田町の星取り表よりも、世論と民意の反応が気がかりだった。この問題に限らず、ねじれ政局の与野党攻防は、詰まるところ民意の争奪戦だ。民意を味方につけなければ、首相は政権維持がままならない。総選挙で政権交代を目指す小沢代表も民意が頼りである。政治指導者の姿勢として「世論・民意重視」は間違いではないが、両党首とも世論と民意におもねる迎合型政治への傾斜が目立っている。自身の理念と識見に基づいて、政治目標と責任を明確に示し、世論と民意をリードする。その気概と知勇のないリーダーは最後に世論と民意に見放されるだろう。
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