オークラはなぜ今、建て替えを決めたのか 背中を押したのは東京五輪だけではなかった
公然の秘密だった建て替え話
オークラの建て替え話は、最近になって出てきたものではない。築50年を超す現本館はいずれ建て替えが不可避。実は1年ほど前から、オークラの営業部隊の最前線では1~2年後の法人宴会など足の長い予約を受けないようになっていた。建て替えに向けた動きは、業界では公然の秘密だった。
それでも、今回の決断に至るまでには、いくつかのネックがあった。1つは、人手不足に伴う建築費の高騰だ。さらに、建て替え工事が進められる来年夏から3年半の間、増え続けるインバウンド(訪日外国人客)需要を取りこぼしてしまうことも懸念材料だった。
建て替え期間中の収入減も、二の足を踏ませる要因だ。再開業後に高水準のサービスを維持するには、既存の人員を維持するのがベスト。ただし、人件費率の高いホテル業界では、売り上げが減少すれば、たちまち人件費などの固定費が重荷となり、赤字転落に直結しかねない。
こうした不安を払拭したのが、2020年に開催が決まった東京オリンピックだ。中長期的にインバウンド需要が拡大する中で、オリンピック前に開業できれば、プレイベントを含め、要人招待で新しいオークラを世界にアピールできる。
オークラを後押ししたのは、それだけではない。2010年に買収したJALホテルズの存在も大きかった。買収当時は経営効率の悪かったJALホテルズを傘下に収めることを疑問視する向きもあった。が、今回の建て替えに際しては、東京本館で発生する余剰人員をグループ内で融通できる余地が広がったとも見ることができる。2002年に出資した京都ホテルにも出向させる可能性もある。
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