中国との終わりなき軍拡競争に突入する日本 中国軍機異常接近の背景と、問われる日本国民の覚悟
それでは、中国の軍事拡大を下支えする中国経済はいつまで高度成長を続けるのか。
海江田万里・民主党代表も5月21日付の朝日新聞の記事の中で、「確かに北東アジアの軍事的脅威は増大している。一方、中国の経済成長は減速し、長期的には日本以上に急速な高齢化を迎える。2ケタ台の国防費の伸びをいつまで維持できるのかという問題も出てくるだろう。世界情勢の変化を冷静に踏まえた判断が求められる」と述べている。
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の瀬口清之氏は、都市化と、高速道路・高速鉄道のインフラ建設という中国の内需主導型の高度成長を支える2大要因が2020年前後まで継続すると予測。ただし、2020年以降は労働力人口の減少のスピードが加速し、高度成長にブレーキがかかり、その後は安定成長に入ると見込んでいる。
中国が国防費を今後も大幅に増やし、尖閣諸島周辺での挑発行為も辞めない中、日米同盟を強化し、中国に対抗しようという安倍首相の積極的平和主義は一見、国民の目にもっともらしく映る。
しかし、日本は巨額の財政赤字を抱えており、現状からの防衛費拡大は財政規律の悪化リスクにつながりかねない。さらに中国の軍拡路線に対峙するためには、社会保障分野など他の分野の予算を抑制しつつ、さらなる増税と厳しい緊縮財政を敷きながら、防衛予算を拡大させることになりかねない。防衛省はここ数年、防衛予算の確保を目的に、意図的に中国の脅威を強調してきている下心も見え隠れする。
中国では内政上の危機が進行
一方の中国も、民族対立など内政上の危機が進行し、予断を許さない国内事情を抱えている。
日中関係は現在、古典的な「セキュリティ(安全保障)ジレンマ」に陥っている。つまり、ある国の国防力の増強が他国にとっての脅威となり、悪循環で軍事的緊張が高まってしまっている。これを断つためには、首脳レベルの対話を再開。尖閣問題を棚上げし、空や海での軍事衝突回避を目的にした、日中間の危機管理メカニズム構築の協議を始める必要がある。
1921年のワシントン会議に日本首席全権委員として出席した加藤友三郎は次のように言っている。「国防は軍人の専有物にあらず。戦争もまた軍人にてなし得べきものにあらず。…国防は国力に相応ずる武力を備うると同時に、国力を涵養し、一方外交手段により戦争を避くることが、目下の時勢において国防の本義なりと信ず」。
先の大戦で、なぜ日本は負け戦の中、戦線を拡大させていったのか。本来は「備え」であるはずの軍事を最重要視し、肝心かなめの外交努力を怠ったことも大きな要因ではないか。外交の出番だ。この加藤友三郎の言葉を今、かみしめたいものだ。
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