中国「義烏」の巨大雑貨市場がオンラインに活路 アリババなどとの競合避け、倉庫や物流に注力

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世界最大級の雑貨市場を運営する中国小商品城は、ECプラットフォームの構築に自ら乗り出した。写真は10月21日に行われた「Chinagoods」の発表会(同社ウェブサイトより)

新型コロナウイルスの世界的流行が続くなか、世界最大級の小商品(雑貨や食品などの小物商品)の集散地として知られる浙江省の義烏卸売市場が電子商取引(EC)に活路を求めている。同市場の運営会社である中国小商品城は10月21日、自社開発した卸売ECプラットフォーム「Chinagoods(チャイナグッズ)」を正式にオープンした。

「コロナ禍で外国人バイヤーが中国に買い付けに来られないなか、もうこれ以上待ってはいられない。オンラインで顧客の需要に対応することで、苦況を打開したい」。中国小商品城の総経理(社長に相当)を務める王棟氏は、財新記者の取材に応じてそう語った。

Chinagoodsには正式オープン前のテスト運用段階で5万社を超えるサプライヤーと50万人を超えるバイヤーが登録した。現時点ではサプライヤーの大部分は義烏卸売市場に実店舗を構える業者だが、将来は中国各地の卸売市場のサプライヤーも誘致していく計画だ。

卸売市場の店子のオンライン化を支援

ネット上には中国のEC最大手の阿里巴巴集団(アリババ)が運営する「1688」など、すでに多数の卸売ECプラットフォームが存在する。だが王氏によれば、Chinagoodsは既存のプラットフォームとは競合せず、むしろ相互補完を目指している。そのために、アリババはもちろんアマゾンやイーベイなど海外のECプラットフォームにもサービスを開放するという。

「売り手と買い手をマッチングさせるプラットフォームはいくらでもある。われわれの強みは契約を履行する段階のリソースやノウハウだ。義烏に現実の倉庫を持ち、商品の発送や通関手続きなどを代行する。これは(リアルの卸売市場である)義烏だからこそできることだ」(王氏)

伝統的な卸売ビジネスのオンライン化は、取引慣行などさまざまな障壁のためにこれまでなかなか進まなかった。例えば、輸出をメインにしていた中小の卸売業者はECに精通した人材が乏しく、国内販売や小売りに進出するための経験もノウハウも足りないのが実態だからだ。

本記事は「財新」の提供記事です

逆に言えば、卸売市場の運営者である中国小商品城にとっては、店子のオンライン化を支援することが市場の生き残りに繋がる。「われわれの最終的な目標は、義烏の卸売市場を繁栄させることだ。すなわち(実物の)商品が義烏で売られ、貸店舗につねに借り手がいることだ」(王氏)。

(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は10月22日

財新 Biz&Tech

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