アニメをうまく描く人になる、たった1つのコツ プロは人から答えを教えてもらうものじゃない

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最初はラフな絵を基にアニメは描かれていく(イラスト:『なぞるだけで絵がうまくなる! アニメ私塾式 キャラ作画上達ドリル 』(宝島社))

アニメにおけるトレスとは、原画(元となるラフな絵、「第一原画」とも記載される)を綺麗な1本線の絵にするため、別の紙に絵をなぞる作業。いわゆる清書のようなもので、「クリンナップ」とも呼ばれている。スタッフロールで「第二原画」や「動画」としてクレジットされている新人アニメーターの作業であることが多い。そのトレス作業を短期間のうちに何度も、何枚も繰り返すことが、アニメーターの絵の上達・速筆に繋がっているのだ。

原画を担当するアニメーターは原画マンと呼ばれており、これは高い画力を持つアニメーターだけがなれるポジション。同時に「レイアウト」と呼ばれる、画面作りの設計図のようなものを作れる技術も求められる。彼らが描く原画は基本的にラフなものであることが多いが、非常に完成度が高く、絵の見せ方も圧倒的にうまい。

アニメーター全員が最初からうまいワケではない

だが実はハイレベルな原画を描き上げる原画マンも、ある程度のキャリアを積んだ後にそのポジションにおさまるケースが多い。新人時代は「動画」を担当する動画マンを経験して技術を磨いたケースがほとんどだ。アニメーターだからといって、みんながみんな最初から絵がうまいわけではない。実力にはバラつきがあって当然のこと。絵が上手くとも、「キャラクターの動かし方」や「アニメ用の綺麗な線の描き方」を知らないという壁にぶつかる人もいる。最初から原画を担当できるアニメーターは本当に一握りの存在だ。

では「第二原画」や「動画」を担当することになるアニメーターたちは、原画マンが描いたハイクオリティな絵を見て、その線をなぞって、綺麗に清書する作業をこなせばどうなるのか。小学生の頃に漢字や英語の書き取りドリルを使って反復練習をしていたのと同じだ。なぞればなぞるほど、うまい絵を自らの手で、早く再現できるようになっていく。うまい線の描き方を覚えると言っても良いかもしれない。

さらに動画マンの作業としては、対象が動いているように見せるため、原画と原画の間を描く「中割り」という作業もある。たとえば誰かが誰かに手を振るシーンを描く場合。「右手が頭より高い位置にあるAの原画」と「右手が肩と同じ高さにあるBの原画」の2枚があるとする。手がBの位置からAの位置に来る、その間の手の動きを描くのが「中割り」の仕事だ。これは原画をなぞる作業と、原画の絵柄を保ったまま手や肩の動きを考えて描く作業が同時に行える。新人アニメーターにとっては何よりも勉強になる仕事だ。

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