「世界最低水準」続ける起業小国・日本のリアル 全米No.1ビジネススクールで教える起業三原則

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そして、3番目の指標「起業失敗への恐怖」は起業機会を見つけたにもかかわらず、失敗への恐怖を感じて起業を思いとどまる人の割合だ。これはロシアと並んで9番目に高い。最下位ではないので、前の2つの指標に比べてずいぶんよいと感じる人も多いかもしれない。上位3カ国、1位のモロッコ(64.2%)、2位のタイ(58.9%)、3位のギリシャ(57.8%)は飛び抜けて高く、それ以降の4位のイタリア(51.7%)から同率9位の日本・ロシア(46.4%)までは団子状態だ。約5ポイントの中に7カ国がひしめき合っている。つまり、ワーストグループだ。年によって変動があるものの、日本はこのワーストグループの常連だ。

失敗を恐れ、自信ももてない、だから、起業の機会を探そうともしない。これが起業小国・日本の現実であろう。

ちなみに、このGEMレポートには、国ごとの起業活動の活発さを示す、総合起業活動指標TEA(Total early-stage Entrepreneurial Activity)が掲載されている。日本は下から5番目とやはり世界最低水準にある。1999年の統計開始以来、日本の総合起業指数は先進国・発展途上国を含めた中で、最低水準であり続けている。この起業活動指数が低迷し続ける国というのは、イノベーションによる問題解決が起こらない、起こせない国ということにほかならない。

仕事や日常生活で、「こうすればもっと便利になる」「こんな不条理はおかしいから変えよう」などという改善のタネを見つけようともしない。そうして自ら未来を変えていくことに自信もない。そのうえ、失敗するのも怖い。それでは、世界を変えようにも変えられない。

「失敗を許さない社会」は、負のスパイラルを生む

とくに筆者(山川)が、注目するのは、日本の「起業失敗に対する恐怖」の指標が継続的に高いことだ。日本は、失敗を恐れて起業を思い止まる傾向が強いのだ。

「失敗はオーケー。だが、失敗を恐れることはノットオーケーだ。失敗は必然。大切なのはその失敗から学び、成功につなげていくことだ」と、筆者は「全米ナンバーワンビジネススクールが教える起業家の思考と実践術」でも、失敗博士に繰り返し言わせている。

それでも、日本の失敗を恐れる文化は根深い。

確かに、起業した場合は、どうしても失敗するリスクは高い。事業会社として新規登録した会社は、5年以内に、約50%の会社が登録抹消(吸収合併を含む)になると言われており、起業の世界ではこれを「5-50ルール」と呼んでいる。要するに、起業家一人ひとりが成功を目指しても、残念ながらその大半は失敗してしまうのだ。

こうした事実に強い恐怖心を抱けば、終身雇用で社員としての地位が保障されている企業を辞めるまでして、起業する人は少なくなるのは仕方のないことかもしれない。給料や待遇のよい大企業なら、なおさらだ。

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