手本はルイ・ヴィトン、松屋社長が描く百貨店像 「薄利多売」を再考、売り場改革は待ったなしに

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しかし、百貨店での衣料品売り上げが減少し続ける現在では、時代遅れと見られがちな商慣習となっている。秋田社長の評価はどうか。

「消化仕入れは一概に悪いことばかりでもない。(店頭に多くの商品を並べ、商品が売れて)つねに在庫が回ることによって、店頭が『キープフレッシュ』であるという利点があった。
今は売り上げが止まっているために、その利点が見えづらい。厳しいときは悪いことばかり見えてくるが、いいところがあったからこそお互いやっていたはず」

2020年も百貨店の破綻・閉店が続いている。1月に山形県で地元百貨店・大沼が経営破綻。8月にはそごう徳島店が閉店し、百貨店の「空白県」が誕生した。

コロナ禍で都心店でも客足の戻りが鈍い中、基幹店など収益の高い店舗だけしか生き残れないのではないのか。

「各都道府県で県庁所在地に必ずあった百貨店がなくなったというだけでも話題になるわけなので、それぞれの役割はあると思う。
ただ、いざ店がなくなって、『なくても別に問題なかったな』と思われるなら、その店には個性がなかったということ。われわれとしては、そうならないようにしたいと思っている。どこにでもあるような店だとネットでもいいと思われるので、個性を磨きあげて、店のイメージや個性を発信することが重要だ」

ルイ・ヴィトンのように突出したい

秋田社長が強調するのは「百貨店としての個性」だ。「この店で買い物をしたい」「この店に行ってみたい」と思われるように個性を確立していきたいとする。そのため、松屋銀座の上層階に独自のセレクトショップを置くなど、「熱烈な松屋ファン」を増やす取り組みを行っている。

都内の銀座と浅草で店舗を構える老舗百貨店の松屋。コロナ時代に生き残りをかける(撮影:今井康一)

とはいえ、「選ばれるブランド」まで魅力を高めることは容易ではない。お手本であり目標とするのが、フランスLVMHグループの著名ブランド「ルイ・ヴィトン」だ。

「ルイ・ヴィトンのすごいところは、ルイ・ヴィトンの商品を持っている人がこれだけいるのに、トップブランドとしての個性や情報をつねに発信して維持しているブランディング。あれこそまさに『キープフレッシュ』だ。
ブランドというのは商品だけではなく、ストーリーがあるかどうか。百貨店は顧客も商品群も幅広いが、店のブランディングという意味では、突出したところをどれだけ作れるかが重要になる」

近年はインバウンド需要に大きく支えられてきた松屋だが、秋田社長は「日本のお客さまにどれだけ支持されるかという原点に執着してきた」と力説する。

高級感やおしゃれな街といった銀座のイメージを体現し、銀座にふさわしい店として、個性を改めて示すことができるか。「ウィズコロナ」時代を見据えた模索は続く。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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