手本はルイ・ヴィトン、松屋社長が描く百貨店像 「薄利多売」を再考、売り場改革は待ったなしに

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集客の抑制などコロナ禍で制約が課されたからこその発見もあった。うさぎの人気キャラクター「ミッフィー」の原画などを展示する展覧会を7~8月に開催した際は、事前予約制で入場者数を従来の3分の1に絞らざるをえなかったが、グッズ販売での客単価は以前の展示会での実績と比べて1.5~2倍に上がった。その要因を秋田社長は次のように分析する。

「これまでは人が多いのでグッズの購入を諦めたり、ゆっくり見られずに買えなかったりした顧客がいたのではないか。つまり、今まではお客さまのニーズに応えられてなかったということだ。
百貨店業界では多くの顧客を呼ぶ薄利多売の側面が長らくあったが、もう一度考え直さなければいけない」

消化仕入れにも利点あり

コロナ禍によって考え直すどころか、一足飛びに「改革待ったなし」となったのが衣料品売り場だ。テレワークが進み、スーツの需要が縮むなど、アパレル業界を取り巻く環境は一段と厳しくなっている。

あきた・まさき/1958年生まれ。1983年に東京大学卒業後、阪急電鉄(現・阪急阪神ホールディングス)入社。1991年に当社入社後、MD統括部長や営業本部長を経て、2007年代表取締役社長就任。2019年より経済同友会の副代表幹事も務める(撮影:今井康一)

「23区」などを運営するオンワードホールディングスや「ポールスチュアート」などを展開する三陽商会は、百貨店から多くの店舗を撤退させる方針を打ち出している。

百貨店業界では、「婦人服に3フロア、紳士服は1フロア」など、衣料品の売り場面積を大きく割く形が定番だが、アパレルメーカーの店舗撤退で売り場に穴が空くおそれもある。その点を秋田社長はどう考えるのだろうか。

「1フロアを紳士服売り場として百貨店が持つ必要があるのか、といった議論にはなると思う。百貨店での購入ニーズは一定程度あるのでしっかり対応すべきだと思う反面、完全にライフスタイルが変わりつつあるのも事実だ。
ただ、松屋はコロナ前からすでにアパレルの面積を減らしていたので、(コロナ禍を受けて)大きく見直すことは今考えていない」

百貨店の衣料品販売では、大量陳列・大量販売のために生まれた「消化仕入れ」という特殊な商慣習がある。

百貨店が商品を仕入れて顧客に販売する「買い取り」と違って、消化仕入れではアパレル企業が在庫リスクを負いながら販売員も用意して商品を売る。アパレル企業にとっては、百貨店の集客力を使って大量に販売できるメリットがあった。

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