クセが凄い「論理的なのに下手な文」を読むコツ 安倍前首相の所信表明演説から学ぶ

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●その結果何が起こるか(結果)
「一億総活躍社会」を実現しようとしたら、結果としてどのようなことが起こるか。うまくいけば、誰もが自分らしく生きていけるような社会になるかもしれない。だが、活躍できない人、うまくいかなかった人は、いっそう落ち込むかもしれない。成功した人と失敗した人の差が開くかもしれない。必ずしも良い結果ばかりとは限らない。

●いつからそうなのか、それ以前はどうだったか(歴史的状況)
これまでの状況を考えてみる。これまで、多くの人が活躍できない状況だったこと、徐々に改善される方向に進んでいることを確認できるだろう。

●どこでそうなったか、ほかの場所ではどうなのか(地理的状況)
ほかの国の状況を考えてみる。おそらく、個人主義的傾向の強い欧米先進国では日本よりも「みんな違っていい」という意識が強く、障害者、難病患者に対する理解も深いと考えられる。

具体的な対策が示されていない

●どうやればいいか(対策)
制度を作ったり、組織を作ったり、教育をしたり。だが、どの対策もなかなか難しいだろう。ところが、この文章ではそれらにまったく触れられていないことが確認できる。

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また、文中に、高齢化の解決にも役立つと書かれているが、具体的にはどういうことなのかの説明がない。高齢者も自分の特性を活かして働けるようにするということだろうが、そうするにはさまざまな具体的な施策が必要だろう。だが、それが示されていない。

このようなことを検証していけば、この文章を深く読むことができる。

この文章が何を語ろうとしているのか、どういう狙いがあるのか、この文章には何が不足しているのかが見えてくるはずだ。

もちろん、この文章は所信表明演説のほんの一部であって、ほかの部分と補足し合っているので、ここだけから演説の評価をすることはできない。

だが、このように読むことによって、この文章の大まかな全体像をつかむことができるとはいえるだろう。

樋口 裕一 多摩大学名誉教授

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ひぐち ゆういち / Yuichi Higuchi

1951年大分県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院博士課程満期退学。フランス文学、アフリカ文学の翻訳家として活動するかたわら、受験小論文指導の第一人者として活躍。現在、多摩大学名誉教授。通信添削による作文・小論文の専門塾「白藍塾」塾長。250万部の大ベストセラーとなった『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP研究所)のほか、『頭がよくなるクラシック』『頭がいい人の聞く技術』『65歳何もしない勇気』(幻冬舎)など、著書多数。

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